帰化と永住、どちらを選ぶべきか?制度の違いと現実的な選択肢を解説

帰化が永住を上回る日——制度のねじれと「国籍」の選択

日本で暮らす外国人の数は年々増加していますが、その中でも「日本国籍を取得する=帰化する」人の動きが近年注目を集めています。2024年においては、年間の帰化許可数が8,863人となり、そのうち中国出身者が3,122人と最多でした。これは過去50年、常にトップだった韓国・朝鮮出身者を初めて上回る結果となり、各方面に衝撃を与えました。

さらに興味深いのは、ネパールやスリランカ、ミャンマーといった南アジア出身者の帰化数が着実に増えていることです。かつては特定の国籍に偏っていた帰化の動きが、より多国籍で多様な方向へと広がってきているのです。

この変化の背景には、単なる国際化や移民の増加だけではなく、「永住よりも帰化のほうが簡単だ」という逆転現象や、制度設計そのものの影響もあると考えられます。本記事では、最近の帰化動向をもとに、日本の永住制度との比較、制度上の意図や課題について考えていきます。

永住と帰化、どちらが難しいのか?

日本で長く生活する外国人にとって、「永住ビザを取るか、帰化して日本国籍を取得するか」は大きな選択です。ところが近年では、「永住よりも帰化のほうが簡単」と感じる人が少なくありません。

実際、永住者として認められるためには、原則として日本で10年以上の在留歴が必要とされています。さらに、収入の安定、納税実績、素行の良さなど厳格な審査項目を満たす必要があります。書類も多く、審査期間も1年以上かかることが珍しくありません。

一方で、帰化については「日本に正当な在留資格で5年以上住んでいること」などが基本条件となっており、永住に比べて短い期間で申請が可能です。その他にも「18歳以上」「素行が善良」「生計を営めること」「元の国籍を喪失すること(二重国籍の不可)」「憲法を尊重すること」「日常生活に支障のない程度の日本語能力」といった条件はありますが、永住に比べて収入や資産に対するハードルはやや低めといわれています。

このように、「滞在する権利」である永住よりも、「日本国籍を得る」帰化の方が条件面で柔軟であるというのは、制度上の大きな逆転現象といえます。

なぜ帰化が選ばれているのか

この制度の“逆転”が、外国人の選択行動に大きく影響を与えています。特に中国・南アジア出身者においては、「永住を目指すよりも、早めに帰化して日本人になった方が安定的である」と考える人が増えています。

帰化すれば、日本人と同じく選挙権を持ち、被選挙権も得られます。生活保護や年金、教育などの社会制度も日本人と同様に扱われるほか、強制退去の対象にもなりません。ある意味、「日本社会における最終的な定着」を果たすのが帰化とも言えるのです。

また、帰化申請は法務大臣の裁量によるものであり、不許可となった場合でも不服申し立てができません。そのぶん、審査の透明性には課題がある一方、実務的には「柔軟に許可されるケースも多い」という現場の実感もあります。特に特別永住者として日本に長年暮らしてきた韓国・朝鮮系の方々の帰化は減少傾向にあり、それに代わって“これからの新しい定住者”が帰化を選び始めている状況です。

なお、こうした傾向に対し、「日本政府が帰化を促進しているのではないか」という見方も出ています。制度そのものに明確な方針は打ち出されていないものの、「永住よりも短期間で申請でき、実質的な生活上の安定もある帰化」という選択肢が残されていること自体、国として“国籍を持つ者を優遇する”構造が存在しているとも言えます。

公示の非公開化と制度の「見えにくさ」

2025年4月1日から、帰化に関する新たな変更が実施されました。それは、従来は官報に掲載されていた帰化者の情報が、原則90日間非公開となったことです。これは「個人情報保護」や「プライバシーへの配慮」を理由としたもので、紙媒体からインターネット版への移行を機に制度が改められたと総務省は説明しています。

この変更によって、一般の国民が帰化状況を把握しづらくなったという批判も出ています。「誰が帰化したのか」という情報が見えにくくなることは、国籍制度の透明性や公的記録のあり方として、今後の議論を呼ぶ可能性があります。

一方で、これを前向きに捉える声もあります。「帰化したという事実が一部から攻撃される」「個人名が検索されやすくなる」などの懸念に対して、非公開化は一定の保護となるという意見もあるのです。

「国籍」を選ぶ時代に

今回のデータが示すのは、単なる外国人の定住化ではありません。彼らは「永住」という滞在資格ではなく、「帰化=国籍」を自ら選び取り始めているという点に注目する必要があります。

経済的安定や家族の教育、日本社会での差別回避、将来的な安心感。これらすべてを考えたとき、「日本人になる」という決断が、現実的かつ戦略的な選択肢になりつつあるのです。

今後も帰化の流れはさらに多様化していくことが予想されます。制度設計の公平性や透明性、そして帰化後の社会的受け入れ体制が問われる時代に入っています。「移民」ではなく「日本人になる」という選択を尊重し、支える仕組みこそが、これからの日本社会に必要とされているのではないでしょうか。

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