英語を教える外国人は全員「教育ビザ」なのか?
「英語を教える外国人=教育ビザ」と思っている人は多いかもしれません。しかし実際には、英語教育に従事する外国人が取得すべき在留資格は、勤務先の種類や職務内容によって異なります。教育ビザが適用されるのは、あくまでも「学校教育法に基づく機関」、つまり小学校・中学校・高等学校などの公的な教育機関で教員として働く場合です。
一方で、民間の英会話教室や語学学校、企業の語学研修担当者として働く場合には、教育ビザは適用されず、「技術・人文知識・国際業務」(通称「技人国」)という就労系ビザが必要になります。これは、外国人が日本国内で就労する際に最も多く使われるビザの一つであり、教育機関以外で英語を教える場合はこちらが原則となります。
たとえば、公立中学校のALT(外国語指導助手)として働く外国人は教育ビザで在留しますが、駅前の英会話スクールや大手予備校で英語講師として勤務する場合には、技人国ビザが求められるのです。したがって、「英語を教える」という行為そのものではなく、勤務先の性格と業務の中身が、どの在留資格を取得すべきかを決定づける要素になるのです。
このような違いを正確に理解していないと、転職やビザ更新の際にトラブルになることもあります。特に教育ビザで来日したALTが、退職後に民間スクールへ転職した場合には、「在留資格変更許可申請」が必要となり、これを怠ると不法就労と見なされるリスクがあります。雇用主側にも適切な知識が求められます。
技人国ビザと教育ビザの主な違いとは?
教育ビザと技人国ビザの最も大きな違いは、「どのような機関で働くか」にあります。教育ビザは、学校教育法に基づく教育機関で、教諭またはそれに準ずる立場で教える外国人に対して与えられる在留資格です。公立学校や私立学校、大学などが該当し、一定の教育的枠組みに属することが前提となります。
一方の技人国ビザは、企業や民間教育機関で働く外国人に対して与えられます。語学講師としての活動もこのビザの対象に含まれており、「人文知識」や「国際業務」としての区分に分類されます。英語を母語とする外国人が、文化や言語の背景を活かして語学指導に従事する場合は「国際業務」、言語教育の知識をもとに教える場合は「人文知識」として取り扱われることが多いです。
また、審査における基準にも違いがあります。教育ビザの場合、教育委員会や学校法人によって雇用されることが多く、その信用力がビザ審査にも反映されやすい傾向があります。一方、技人国ビザでは、雇用主が個人事業主や小規模法人であることもあり、雇用の継続性や安定性、職務内容の明確性、報酬の妥当性などがより細かく審査されます。
さらに、活動範囲にも違いがあります。教育ビザはあくまで教育機関での活動に限定されているため、副業や他の機関での就労は原則として認められません。一方、技人国ビザでは、職務内容と雇用形態に応じて複数の勤務先での活動が認められるケースもありますが、その場合も「資格外活動許可」が必要になることがあります。
このように、両者の間には制度的な違いが数多く存在するため、安易に「似たような仕事だからビザは同じでよいだろう」と考えるのは危険です。就労先の性格、雇用形態、職務内容を丁寧に確認し、それに合ったビザを選ぶことが不可欠です。
在留資格変更の注意点と実務の流れ
教育ビザと技人国ビザは、表面上の仕事内容が似ていても別の在留資格です。そのため、ビザのまま転職することはできません。たとえば、教育ビザで来日していたALTが、退職後に駅前の英会話教室で働こうとする場合、「在留資格変更許可申請」が必要です。
この申請は、外国人本人が出入国在留管理局に提出するものであり、雇用主が用意すべき資料も多くあります。提出書類の例としては、雇用契約書、職務内容説明書、勤務先の事業計画書、会社登記事項証明書、雇用主の決算書などが挙げられます。雇用主が個人事業主である場合は、確定申告書や通帳コピー、事務所の写真なども求められることがあります。
審査期間は通常1〜3か月程度ですが、書類の不備や不明確な点があると追加資料を求められ、さらに時間がかかることもあります。また、審査のポイントは「職務内容が在留資格に合っているか」「報酬が適正か」「継続性があるか」といった実務的な観点です。特に勤務時間が極端に少なかったり、報酬が低すぎたりすると、「就労ビザの対象となる活動とは認められない」と判断され、不許可になる可能性があります。
また、技人国ビザで他の民間教育機関へ転職する場合には、在留資格自体の変更は不要ですが、「就労資格証明書」の申請を行うことで、適法な就労活動であることを証明できます。これは任意の手続きですが、転職後に更新申請を行う際のトラブルを避けるためにも、多くの専門家が取得を勧めています。
就労系のビザは、「活動内容」と「雇用主」が一体として審査される性質があるため、職場が変わるときには、その都度確認が必要になります。本人も雇用主も、「今の在留資格で働けるかどうか」を慎重に見極めて行動すべきです。
正しい在留資格選びがトラブルを防ぐ――事業者と講師の双方に必要な知識
日本で働く外国人講師が増える中、在留資格に関する誤解や知識不足が原因で、採用時や更新時にトラブルが発生するケースが後を絶ちません。特に「教育ビザ」と「技人国ビザ」の区別がついていないことで、意図せず不法就労となってしまうリスクがあります。
採用側である事業者も、正しいビザの種類と取得手続きについて理解しておくことが求められます。たとえば、短時間の契約であっても、本人の学歴・職歴が在留資格の要件を満たしているか、職務内容が適正であるか、報酬水準が妥当かなどを確認しなければなりません。契約書を取り交わす際にも、業務内容や勤務時間を明確に記載することが重要です。
また、外国人本人も、自分の在留資格の範囲内で働く責任があります。「同じ職種だから問題ない」と自己判断せず、転職や副業をする際には、必ず専門家や入管に確認をとる姿勢が必要です。
今後ますます外国人講師の需要が高まる中で、適正なビザ運用は雇用の継続と信頼関係の基盤となります。在留資格の違いを正しく理解し、講師と雇用者の双方が安心して働ける環境を整えることが、これからの語学教育現場において不可欠な視点です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「こんなことで相談していいの?」
—— 大丈夫です! あなたの不安に丁寧に向き合います
フジ行政書士事務所では、日本で暮らす外国人の方が安心して生活できるよう、ビザのことはもちろん、手続き・仕事・暮らしの中で感じる不安や悩みにも寄り添っています。
「誰に相談したらいいかわからない」そんなときこそ、フジ行政書士事務所にご相談ください。
あなたにとっていちばん良い形を、一緒に考えていきます。
※LINEをご利用でない方は、▶ お問い合わせフォームはこちら からもご相談いただけます。
コメント