日韓ワーキングホリデー制度が2回取得可能に――拡充の背景と今後の展望

首脳会談で合意が見込まれる制度拡充の内容

2025年8月23日、日本の石破総理大臣と韓国の李在明大統領が行う首脳会談において、両政府はワーキングホリデー制度を拡充し、これまで原則1回のみであったビザ取得を2回まで認める方向で調整を進めています。ワーキングホリデーは若者が互いの国で働きながら生活を体験できる制度であり、両国間の人的交流を促進する代表的な枠組みとされています。

これまでは、18歳から25歳までを対象に最長1年間の滞在が認められていましたが、今回の拡充により同じ人が2度目の機会を持てる可能性が開かれる見通しです。外務省のデータによれば、日本が昨年発給したワーキングホリデービザ約2万2000件のうち、韓国人が7400件余りを占め、全体の3割以上に達しました。韓国は日本にとって最も多く利用している国であり、この制度拡大は利用状況に応じた対応とも考えられます。

また、この制度はすでにイギリス、カナダ、ドイツ、ニュージーランド、デンマーク、オーストリア、アイルランド、スロバキアといった8カ国で「2回まで取得可能」という仕組みが導入されています。今回の韓国追加は、その延長線上にある施策であると同時に、両国関係の改善を示す象徴的な一歩として受け止められています。

制度拡充に至る経緯と背景

今回の決定に至るまでには、いくつかの要素が影響してきました。

まず、日韓関係全体の改善の流れがあります。近年、歴史問題や安全保障を巡る摩擦が続いたものの、2023年以降は首脳同士の往来が再開し、協力関係の再構築が模索されてきました。その中で、文化や人的交流の分野は摩擦が比較的少なく、両国が前向きに合意しやすいテーマとなっていました。

次に、韓国人の利用実績の多さです。外務省の統計でも、発給件数の約3割を韓国人が占めており、制度を積極的に利用している国です。利用者の声としても「一度では物足りない」「もう一度体験したい」といった意見が以前から見られ、制度拡充の必要性が感じられてきました。特に韓国では若者の就職難や競争の厳しさが背景にあり、海外経験はキャリア形成にプラスとされる傾向があるため、この制度は強く支持されてきました。

さらに、日本国内の人手不足という事情も無視できません。観光業や飲食業、農業、スキーリゾートなどの分野では短期の労働力が必要とされることが多く、すでに生活経験や日本語力を持つワーキングホリデー経験者が再度来日することは、受け入れる側にとっても効率的だと考えられてきました。こうした点は、業界関係者からの要望として現れてきた部分です。

また、日本政府が他の先進国に対して「2回取得」を認めていたことも重要な背景です。イギリスやカナダなどでは既に導入されており、「韓国でも認められるべきではないか」という意見が広がっていました。

これらの事情が重なり、石破総理と李在明大統領の初会談において合意を目指すことが、両国にとって成果として示しやすいテーマとなったのです。

制度拡充で期待される効果と受益者

今回の制度拡充によって、どのような層がメリットを感じやすいのかを整理すると、いくつかの側面が見えてきます。

第一に、韓国の若者です。これまで最も多く日本のワーキングホリデーを利用してきた国であり、2回目の機会が得られることは、語学や文化理解の深化、キャリア形成の一助として期待されます。韓国の就職市場において海外経験が評価されやすいこともあり、この制度の拡充は魅力的に映ると考えられます。

第二に、日本国内のサービス業など人手不足が続く分野です。観光地や飲食業、宿泊業では短期人材の需要が高く、ワーキングホリデー参加者はその補完となり得ます。特に2回目の参加者は日本での生活経験を持つため、現場での適応がスムーズであることが期待されます。

第三に、日韓両政府です。外交的に難しい課題が残る中で、若者交流の拡大は比較的合意しやすく、国民に前向きな成果を示しやすい分野です。日本にとっては「関係改善は着実に進んでいる」とアピールでき、韓国にとっては「若者の海外経験の機会を広げた」と示せる施策になります。

第四に、語学学校や留学エージェント、シェアハウスなど関連ビジネスの分野です。利用者の増加は教育や住居、就労支援などの需要を生み、関連事業の拡大につながる可能性があります。

一方で、制度拡充に懸念を抱く人々もいます。例えば「外国人の増加に不安を感じる一部の国民」や、「短期的ではなく長期的な人材確保を求める業界」などです。ただし、ワーキングホリデーはもともと一時的滞在を前提とする制度であるため、大きな対立に発展する可能性は低いと考えられます。

制度拡充を歓迎する声は以前から存在していました。特に韓国の若者の間では「初回のワーキングホリデーでは語学や生活に慣れるだけで精一杯で、働く経験や本格的なキャリア形成には十分な時間が取れなかった」という意見が多く見られます。再び機会が与えられることで、1度目では挑戦できなかったことに取り組むことが可能となり、滞在の質を高められるという期待が強まっています。

日本側でも、短期人材を必要とする業界にとっては歓迎すべき制度といえます。特に観光業界はコロナ禍で深刻な打撃を受けましたが、インバウンド需要が戻る中で慢性的な人手不足が問題となっています。日本語学習経験があり、生活にも慣れた再渡航者は現場にとって即戦力となりやすく、トレーニングや指導の負担も軽減されます。こうした点から、ワーキングホリデーの制度拡充は人手不足対策の一環としても一定の役割を果たす可能性があります。

一方で、課題も存在します。ワーキングホリデーはあくまで「休暇を主とした滞在」であるため、就労を目的とする制度ではありません。そのため、2回取得が可能になったとしても、長期的かつ安定的な労働力の確保には直結しないという指摘もあります。制度の趣旨と現場の期待の間には温度差がある可能性があり、今後はどのように制度の意義を維持しつつ利用を促していくかが問われるでしょう。

また、韓国だけでなく、他の利用希望者が多い国や地域からも「2回目を認めてほしい」という要望が高まることが予想されます。今後は対象国の拡大をどうするか、発給枠をどのように調整するかといった新たな検討課題が浮かび上がる可能性があります。制度拡充は国民感情や社会的受け入れ状況とも密接に関わるため、両国政府がバランスをとりながら運用していくことが求められます。

総じて、今回の拡充は単なる制度改正ではなく、若者世代に具体的な利益をもたらすと同時に、日韓関係の改善を象徴する施策と位置づけられます。その成果を持続的なものとするためには、制度利用者の声を丁寧に拾い上げ、社会全体にプラスの影響を広げていく取り組みが今後一層重要になると考えられます。

韓国追加の外交的意味と今後の展望

韓国が「2回取得可能国」に加えられることには、制度的な利便性の向上にとどまらず、外交的な意味も含まれています。

まず、日韓関係改善の具体的成果として国民に示しやすい点です。歴史や安全保障といったテーマでは合意形成が難しいものの、若者交流の拡大はポジティブに受け止められることが多く、首脳会談で合意することで「改善の流れが着実にある」と印象づけることができます。

次に、若者世代への直接的な働きかけです。韓国の若者は日本文化や観光への関心が強く、交流を歓迎する傾向があります。日本にとっては韓国の将来世代に好意的な印象を与えることにつながり、韓国政府にとっては「若者のチャンスを広げた」とアピールできる成果になります。

また、生活を伴う交流を通じて人間関係が築かれる点も重要です。観光や短期留学では得にくい経験が積み重なることで、市民レベルでの信頼関係が形成され、長期的には両国の安定した関係構築に寄与する可能性があります。

さらに、このような交流施策がうまく進むことで、他分野での協力にも良い影響が及ぶことが想定されます。経済や安全保障、環境問題といったテーマでの連携も、国民の理解を得やすくなると考えられます。

今後の展望としては、制度の正式合意と実施時期が注目されます。報道では早ければ2025年10月の実施が見込まれており、実際の申請が開始されれば関心がさらに高まると予想されます。将来的には、韓国以外の国々からも「2回目取得を認めてほしい」という声が強まり、対象国が広がっていく可能性もあります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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