地域企業が外国人を受け入れるときに直面するリアルな課題
地方の中小企業では、深刻な人手不足が続いています。製造業や介護、飲食、宿泊などの現場では、求人を出しても応募がなく、外国人の採用に踏み切る企業が増えています。しかし、いざ採用に動くと「どの在留資格で雇えるのか」「どんな条件を整えるべきか」が分からず、手続きの途中で止まってしまうケースも多いのが現実です。
採用できたとしても、数か月で退職してしまう、職場に馴染めない――そんな悩みを抱える経営者も少なくありません。根本的な原因は、制度への理解不足と準備不足です。外国人雇用は、単に人を採用する行為ではなく、法令・文化・生活支援を含めた「受け入れ体制の構築」そのものなのです。
「なんちゃって技人国」に要注意
外国人採用における最初の関門は、在留資格の適正化です。ここで特に注意が必要なのが、いわゆる「なんちゃって技人国」と呼ばれる誤用です。
「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)は、大学や専門学校を卒業し、専門性を活かした業務に従事する人のための資格です。しかし、実際の現場では、本来専門性が求められない単純作業や販売補助などの職務にこの資格を当てはめるケースが見られます。表面上は「事務職」や「通訳補助」として採用し、実態は倉庫作業やレジ打ちなど――これが「なんちゃって技人国」です。
入管庁は近年、こうした誤用に非常に厳しくなっており、更新時に不許可となる例が増えています。企業が意図せず違反状態に陥るケースもありますが、結果的に「不正雇用」と見なされるおそれがあります。「留学生を卒業後すぐに採用できる」と安易に判断せず、実際の職務内容が在留資格の要件を満たすかを専門家に確認することが何より重要です。
在留資格を正しく選ぶことが安定雇用の第一歩
外国人の採用では、業種や職務内容によって使える在留資格が大きく異なります。たとえば、通訳、翻訳、海外取引、システム開発、マーケティングなど、知識や技術を要する職務であれば「技人国」に該当します。一方で、現場作業や単純な補助業務を中心とする職種は、別の在留資格の検討が必要となります。
どの資格を使うかを誤ると、申請時に不許可になるだけでなく、入管から改善指導を受ける場合もあります。また、社内で業務内容が変わる場合も注意が必要です。たとえば、最初は翻訳業務だったのに、いつの間にか倉庫作業中心になっていた――これも資格の趣旨から外れ、在留資格取消の対象となる可能性があります。
行政書士として現場を見ていると、最初に「在留資格と業務内容の整合性」をきちんと整理できている企業ほど、トラブルが少なく、外国人社員も長く定着しています。
契約内容の明確化とキャリア支援の仕組みづくり
外国人が安心して働くためには、待遇や契約内容を明確にすることが欠かせません。「日本語ができるからとりあえず採用した」という姿勢では、長期的な雇用は難しいでしょう。
雇用契約書は日本語だけでなく、英語や母国語での併記が望ましいです。労働時間、休日、給与の支払日、残業の有無――これらを正確に説明し、双方の認識を一致させることが大切です。また、在留資格更新のタイミングで面談を行い、将来のキャリアやスキルアップの方向性を共有することで、離職を防ぐことができます。
多くの外国人が「この会社で成長できる」と実感できれば、定着率は大きく上がります。資格取得や日本語教育の支援制度を導入する企業も増えており、「人を育てる企業」としての信頼にもつながります。
地域社会とのつながりをどう作るか
外国人の定着には、職場環境だけでなく生活面でのサポートも欠かせません。地方では、住宅探し、役所での手続き、医療機関の受診など、日常生活に困るケースが多く見られます。こうした支援を企業が手伝うことで、安心して働き続けられる環境が整います。
さらに、地域行事への参加や地元ボランティアへの協力を促すことで、外国人社員と地域住民の間に信頼関係が生まれます。お互いを理解し合う機会を増やすことが、トラブル防止にもなり、地域全体の調和につながります。
既存社員に対しても、多文化理解の研修を行うことが望ましいです。宗教上の配慮(ラマダン中の食事制限、祈りの時間など)や文化の違いを理解することで、誤解や摩擦を防げます。多様性を受け入れる企業文化こそが、これからの時代の競争力です。
採用後こそが本当のスタートライン
採用が決まった瞬間がゴールではなく、むしろそこからが始まりです。現場では、言葉の壁、業務理解のズレ、生活習慣の違いなどが原因で、早期離職に至る例が後を絶ちません。「文化が違うから仕方ない」で片づけず、企業が支援体制を整えることが大切です。
特に、在留資格の更新手続きは慎重に対応する必要があります。書類の不備や遅延によって、本人が在留期限を過ぎてしまうと、法的トラブルに発展することもあります。行政書士が関与すれば、期限管理や申請書類の整備が確実に行われ、安心して働ける環境を維持できます。
行政書士が果たす役割
行政書士は、外国人雇用に関わるあらゆる法的手続きを支援できます。具体的には、在留資格の選定や入管申請、契約内容の確認、社内体制の整備、再発防止のアドバイスなどです。単なる書類作成にとどまらず、「不適切な在留資格利用を防ぎ、企業と外国人双方を守る」ことが本来の役割です。
特に「なんちゃって技人国」のようなグレーな採用は、企業にとってリスクが大きく、後から取り返しのつかない結果を招くことがあります。正しい制度運用を行い、合法的かつ持続的な受け入れを進めることが、企業の信頼を守る最大のポイントです。
多様な人材と共に生きる地域へ
外国人雇用は単なる人材確保策ではなく、地域の未来を形づくる取り組みです。異なる文化や価値観を受け入れることで、新しい発想や改善が生まれ、企業の競争力も高まります。
「在留資格の線引きが難しい」「採用後の支援に不安がある」――そんなときこそ、行政書士などの専門家に相談してください。法令に基づいた正確なアドバイスを受けることで、無理のない形で外国人雇用を進めることができます。
そして何よりも大切なのは、制度に合わせるのではなく、人と人との信頼を育てること。地域企業がその役割を果たすことこそが、これからの「共に働く時代」の礎となるのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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