外国人採用が進む背景――求人が成立しない現実
近年、多くの業界で「求人を出しても応募が来ない」という状況が深刻化しています。特に地方や中小企業では、人手不足が常態化し、事業の維持そのものが難しくなっています。従来であれば「給与を上げる」「待遇を改善する」ことで人材を確保できましたが、それでも応募者がいない。こうした現実のなかで、企業はやむを得ず外国人採用へと踏み切るケースが増えています。
日本全体の労働人口は年々減少しており、製造業、介護、建設、外食などの現場では特に人手不足が深刻です。もはや「外国人を採用するかどうか」ではなく、「採用しなければ業務が回らない」という段階に来ています。外国人採用は企業の戦略的な選択というよりも、現場を維持するための必然的な対応といえます。
また、外国人材の採用を後押しする法制度の整備も進みました。技能実習や特定技能、留学生の就職など、さまざまな在留資格が選択肢として用意され、企業が状況に応じて採用を検討しやすくなっています。しかし、採用が容易になった一方で、支援体制の確立や在留資格の管理など、企業に求められる責任も増しています。
企業が外国人を採用する理由――コストと必要性の両立
外国人を採用する最大の理由は、言うまでもなく「人手不足の解消」です。求人を出しても日本人が集まらない中で、企業は現場を維持するために外国人労働力を頼らざるを得ません。特に地方の中小企業では、外国人がいなければ事業継続が困難という声も少なくありません。
ただし、採用は「安易な選択」ではありません。企業にとって、外国人を雇用するにはコストも伴います。通訳・教育・生活支援の体制を整える必要があり、採用後の定着にも気を配らなければなりません。単に「人手が足りないから雇う」ではなく、長期的に戦力化するための仕組みづくりが欠かせません。
また、採用後の管理を外部に委託する場合は、登録支援機関の関与が必要になります。登録支援機関を利用すれば専門的な支援が受けられる反面、委託費用が発生します。逆に、社内で支援体制を完結させようとすれば、担当者の育成や管理の負担が増し、社内リソースを圧迫します。いずれの方法を取るにせよ、外国人雇用は「コストゼロでできること」ではありません。
採用をためらう企業の本音――言語・制度・転職リスク
外国人採用をためらう企業の多くは、まず「日本語力への不安」を挙げます。特に接客や介護など対人対応が多い業種では、言葉の壁が業務の妨げになることがあります。加えて、文化や価値観の違いから、職場内のコミュニケーションが難しくなるケースもあります。
次に問題となるのが「制度面の複雑さ」です。在留資格の種類によって従事できる業務内容が異なり、更新や変更の際には細やかな手続きが必要です。管理を怠ると、企業側が不法就労助長とみなされるおそれもあり、リスクを正しく理解していないと法的トラブルにつながる可能性があります。
さらに、近年は「転職リスク」も無視できません。特定技能や技人国ビザを持つ外国人が、より条件の良い企業に移る例が増えています。教育や指導にコストをかけても、短期間で退職されると経営的なダメージが大きく、再び採用活動からやり直しになります。求人難の中で新たな人材を見つけるのも容易ではなく、企業側の疲弊感が強まっています。
このような事情から、外国人採用は「リスクを理解した上で取り組むべき経営課題」といえます。人材を安定的に確保するには、単なる雇用ではなく、制度理解と定着支援を組み合わせた運用が不可欠です。
これからの外国人採用――体制整備と専門家の関与
外国人採用を持続的に行うためには、支援体制を社内外で確立することが重要です。登録支援機関を活用する場合は、委託契約の内容や支援範囲を明確にし、企業側の責任範囲を整理しておく必要があります。一方で、社内に担当部署を設けて直接支援を行う場合は、担当者が入管制度や在留資格の運用に精通していることが求められます。
また、外国人本人にとっても、安定した職場環境がなければ生活基盤を築くことができません。企業が採用した人材を長期的に育てるためには、生活支援や相談体制を整備し、「働きやすい職場づくり」を進めることが重要です。単に制度に沿って雇用するだけでなく、外国人が地域社会に定着し、日本の企業文化の中で成長できるようサポートする姿勢が求められます。
行政書士としては、企業と外国人双方が安心して働ける関係を築けるよう、在留資格の申請や登録支援機関の届出支援、受入体制構築のアドバイスなどを通じて、実務面からの支援を行うことが可能です。外国人雇用を成功させるには、「採用して終わり」ではなく、採用後の制度運用・定着・更新を見据えた総合的な支援が欠かせません。
人材の確保が年々難しくなるなかで、外国人採用は今後も避けて通れないテーマです。求人難と支援コストのバランスをどう取るか――それが、これからの企業経営における大きな課題となるでしょう。
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