日本が「選ばれる国」になるために
日本の社会において、外国人労働者の存在感は年々増しています。一昔前までは一部の工場や建設現場に限られていた印象がありましたが、今ではコンビニのレジや介護施設、飲食店、保育現場、農業の現場に至るまで、私たちの身の回りのあらゆる場所で外国人が働いています。この傾向は一時的なものではなく、今後もさらに進行していくと見られています。なぜなら、外国人雇用は単に人手不足への対処ではなく、すでに社会の土台を支える存在として不可欠な役割を果たしつつあるからです。
まず、外国人雇用が進む大きな背景として、日本の人口構造の急激な変化があります。総務省の統計によれば、生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少を続けており、今後も止まる気配はありません。地方では若者が都市部に流出し、地域社会の維持すら困難な状況に陥っている自治体もあります。こうした中で、建設、介護、製造、農業、外食、運輸など、現場の労働力を確保するためには外国人の力が必要不可欠です。
制度面でも、技能実習制度、特定技能制度、技術・人文知識・国際業務ビザなど、外国人を合法的に雇用する仕組みが年々整備されてきました。さらに高度外国人材に対しては、永住申請の要件緩和やポイント制の導入など、優秀な人材を定着させようとする政策も進んでいます。背景には単なる人手不足だけでなく、グローバル競争の中で「日本という国が選ばれる側にならなければ人材が確保できない」という認識の広がりがあります。
このような状況は日本に限ったものではありません。世界中で高齢化や少子化が進む中、ドイツでは熟練労働者法を改正し、海外人材の受け入れを加速させ、カナダやオーストラリアでは移民枠を拡大し、社会全体で外国人を定着させる施策を進めています。韓国では外国人の永住許可を柔軟化し、教育や住宅支援にも力を入れ始めています。つまり、外国人労働者を「労働力の輸入」として捉える時代から、「共に生きる構成員」として受け入れる段階に世界全体が移行しているのです。
外国人は“税の支え手”でもある
こうした外国人雇用の拡大は、税収の側面でも重要な意味を持っています。外国人であっても日本国内で就労し、一定の要件を満たせば「税法上の居住者」として扱われ、所得税や住民税を日本人と同様に納める義務があります。また、健康保険や厚生年金などの社会保険料も当然ながら発生し、社会保障制度の財源に貢献しています。とくに地方自治体にとっては、人口減少に伴う税収減に直面する中で、外国人住民の存在が貴重な財政基盤となり得るのです。
さらに、税という直接的な負担だけでなく、生活を通じた地域経済への波及効果も見逃せません。家賃や光熱費、食費、交通費、通信費、教育費など、外国人住民の日常の支出は地域内の消費を支えています。外国人が定住することで、空き家が活用され、飲食店や小売店が成り立ち、バス路線や保育所が維持されるといった具体的な恩恵も各地で確認されています。つまり、外国人住民は「納税者であり、生活者であり、地域の経済主体でもある」という現実が広がっているのです。
共に暮らす社会の制度はまだ途上
一方で、外国人雇用の拡大には制度的・社会的な課題も伴います。これまでは「とりあえず人手が足りないから外国人を雇う」という受け入れが中心でしたが、今後は「共に暮らし、子どもを育て、老後も支える存在として受け入れる」社会の仕組みづくりが不可欠になります。すでに日本で育つ外国人の子どもたちが増え、彼らは事実上の「日本の次世代」として、教育や福祉の対象になっています。しかし教育現場では、日本語支援の不足、教員の体制不足、行政との情報格差など、多くの課題が山積しています。
また、外国人自身が日本社会で安心して暮らすには、在留資格の更新手続き、ビザ切替、税務申告、子育て支援制度の利用、住宅契約、医療アクセスといった多様な行政サービスを「自分の言葉で理解できること」が前提になります。しかし、現実には翻訳が不十分な自治体も多く、情報格差が孤立や制度利用の遅れを招いています。行政書士や通訳者、支援団体などがこのギャップを埋める役割を果たしていますが、全体的にはまだ支援体制が追いついているとは言えません。
共生社会の構築において重要なのは、「外国人を特別扱いする」ことではなく、「同じ住民として同じルールのもとに支え合う」ための土台を整えることです。そのためには、労働現場だけでなく、地域社会全体の制度設計、教育制度、多言語対応、税や年金制度の周知など、多岐にわたる分野での整備が求められます。とくに「支える人」としてだけでなく、「支えられる場面がある」という視点を持つことで、外国人と日本人の間にある目に見えない壁は確実に低くなるはずです。
見えない労働力から「地域の顔」へ
そして今、私たちが目にしているのは、かつては見えなかった「働く外国人の顔」が、日常のなかでどんどん可視化されているという現実です。保育園で子どもを預かってくれる先生、スーパーでレジを打つ人、バスを運転する人、駅の清掃スタッフ、介護施設で働くヘルパー、学校のALT、配送業者、農場の収穫スタッフ――そのどれもが日本の生活を下支えしている存在であり、もはや「見えない労働力」ではありません。むしろ「地域の顔」として、日々の生活に溶け込んでいるのです。
今後、日本社会にとっての外国人雇用は、「数合わせの人手」ではなく、「税の支え手」「地域社会の担い手」としての側面がますます強まっていくでしょう。それに応じて、単なる労働政策ではない、生活政策、教育政策、税制、住宅政策、そして地域づくり全体が見直される必要があります。「働いてもらう」のではなく、「共に暮らし、社会をつくる仲間として迎える」発想への転換が求められているのです。
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