個人事業主でも外国人を雇える?――審査は法人より厳しい視点で見られる
英会話教室などの事業を個人で営む人が、外国人講師を雇いたいと考えるケースは少なくありません。実際に、個人事業主であっても就労ビザを使って外国人を合法的に雇用することは可能です。しかし、雇用主が法人ではなく個人である場合、出入国在留管理局による審査はより慎重で厳しくなる傾向があります。
個人で外国人を雇用する場合、まず前提として「就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)」の申請条件を満たすことが求められます。講師本人の学歴・職歴、業務内容との整合性、報酬額などが評価の対象となり、これらに加えて雇用主側の「事業の安定性」や「継続性」、「事務所の実在性」などが厳しく見られます。
たとえば、安定した収入や雇用契約の継続性が認められないと、「継続的な雇用関係にある」と判断されず、ビザが不許可となることもあります。とくに時間単価制のアルバイト契約などは、「安定して働く就労活動」と見なされにくいため注意が必要です。
また、自宅で英会話教室を運営しているような場合は、教室と居住空間の明確な区分がなければ「事業実体がない」と判断されるリスクもあります。そのため、可能であれば別の専用事務所を設け、事業実態を証明できるような通帳コピー、確定申告書、事業計画書などを揃えておくとよいでしょう。
就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の要件――講師の学歴や業務内容に注意
外国人を語学講師として雇用する場合、その業務が「技術・人文知識・国際業務ビザ」に該当する必要があります。これは、主に企業の語学研修や民間英会話スクールなどで英語を教える職種に適用されます。ただし、この在留資格の中でも「国際業務」と「人文知識」で要件が少し異なります。
まず、「国際業務」として認められるには、英語を母語とする外国人が、その言語や文化に基づいて語学指導を行うことが前提です。この場合、申請者は原則として大学卒業、または英語教育に関する3年以上の実務経験が必要とされています。
一方、「人文知識」の場合は、人文科学の知識(言語・文化など)を活かして教育に従事する形になります。こちらも基本的には大学卒業が条件ですが、専門学校卒業者であっても10年以上の実務経験があれば認められる可能性があります。
つまり、「英語が話せるから講師として雇いたい」というだけではビザが許可されません。学歴や実務経験の裏付けがなければ、在留資格を取得できないのです。
また、報酬についても重要な審査ポイントです。就労ビザでは「日本人と同等額以上の報酬」であることが義務付けられており、あまりにも低い給与(例えば月10万円未満)では不許可となるリスクがあります。目安としては、月額20万円前後以上が望ましいとされます。
教育ビザとの違い――転職時には資格変更が必要な場合も
外国人が「英語を教える」という行為は一見同じでも、勤務先によって取得すべきビザの種類が異なることがあります。たとえば、小学校・中学校・高校などの公教育機関で英語教師として働く外国人は「教育ビザ」で在留していることが一般的です。
しかし、そうした外国人が民間の英会話スクールに転職しようとする場合には、「教育ビザでは同じく英語を教えるから問題ない」と思われがちですが、これは誤解です。教育ビザと技人国ビザはまったく別の在留資格であり、転職にあたっては「在留資格変更許可申請」が必要となります。
実務上、この切り替え手続きは、初めてビザを取得するのと同じくらいの難しさを伴います。職務内容や勤務条件がしっかりしていないと不許可となる可能性もあるため、専門家に相談しながら手続きを進めることが推奨されます。
一方、すでに他の英会話スクールで技人国ビザを持っている人が、別のスクールに転職する場合には、業務内容が大きく変わらなければ「在留資格変更許可申請」は不要です。ただし、新しい職場でも適法に就労していることを証明したい場合や、職務範囲に違いがある場合は、「就労資格証明書交付申請」を行うことが望ましいとされています。
この申請は外国人本人が行うもので、出入国在留管理局で審査が行われ、許可されると新しい勤務先での就労が正式に認められます。
海外在住の人材を招聘するには――在留資格認定証明書が必須
すでに日本に在住している外国人を雇う場合とは異なり、海外に住んでいる人を新たに雇用したい場合には「在留資格認定証明書(COE)」を申請しなければなりません。この手続きは、外国人を日本に呼び寄せて働いてもらうための“入国のための前提条件”となります。
申請は雇用主が代理で行うことができ、外国人の学歴・職歴に関する資料、雇用契約書、業務内容、雇用主の事業資料(確定申告書、通帳コピーなど)を提出する必要があります。審査を通過すればCOEが発行され、それを本人に郵送し、本人は現地の日本大使館または領事館でビザを申請する流れとなります。
この一連のプロセスには時間がかかり、通常でも1ヶ月以上、海外からの招聘では2〜4ヶ月程度を見込んでおく必要があります。採用時期が決まっている場合は、余裕をもって計画的に進めることが大切です。
また、就労ビザは本人が入国した後に在留カードを交付されて初めて就労が可能となります。入国までの間に雇用契約のスタート日が来ないよう調整することも重要です。
雇用主が個人事業主である場合、法人よりもビザ審査が慎重になることは避けられませんが、必要な準備と正しい手続きを踏めば、外国人講師の受け入れは十分に実現可能です。講師本人の経歴と業務内容の整合性、契約内容の明確さ、そして事業の安定性と継続性――これらを丁寧に積み上げていくことが成功への鍵です。
また、海外から呼び寄せるのか、すでに日本に住んでいる人を採用するのかによっても必要な申請が大きく変わります。ビザの種類や手続きに不安がある場合は、専門家に相談しながら進めることで、スムーズな採用と在留資格の取得が可能になります。
日本で働きたいと願う外国人と、それを受け入れたいと考える事業者の間に、正しい法的手続きと丁寧な準備が橋渡しとなるよう、実務の一つひとつを大切にしていくことが求められています。雇用主としての責任と理解を持ちながら、一歩ずつ進めていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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