国際結婚の婚姻届|必要書類と全体の流れをわかりやすく解説

国際結婚の婚姻届はどこが難しいのか

国際結婚を考えるカップルにとって、最初の大きな手続きが「婚姻届」です。日本人同士の婚姻届と比べると、必要書類が多く、役所だけでなく外国側の機関(大使館・領事館)へも関わるため、全体像がつかみにくいのが実情です。とくに外国側の書類が一つ欠けただけでも提出できないことがあり、事前準備の重要性が非常に高い手続きといえます。本記事では、国際結婚の婚姻届がどのような流れで進むのか、どの書類を用意すればよいのか、そして実務上どこでつまずきやすいのかを、行政書士の専門的な視点からわかりやすく解説します。

日本と外国の“二つの法律”を満たす必要がある

まず押さえておきたいのは、日本では「日本の法律に基づいて婚姻届を受理する」ため、日本側の要件と外国側の要件が両方そろっている必要があるという点です。日本人同士の結婚では戸籍に基づいて確認できますが、外国人には戸籍がありません。そのため、外国人が自国で結婚できる資格を持っているかどうかを「公的に証明する書類」が必須となります。これがいわゆる婚姻要件具備証明書や独身証明書、出生証明書などです。これらの書類は、国によって名称も取得先も形式も異なるため、まずは相手国の在日大使館・領事館で必要書類の確認を行うことが欠かせません。

国際結婚の婚姻届の流れ(全体像)

婚姻届の提出は、日本の市区町村役場で行いますが、いきなり役所へ行くのではなく、事前準備が何より重要です。一般的な流れは次のようになります。

1 外国人側が母国で必要書類を取得するか、在日大使館で発行してもらう
2 各書類を日本語へ翻訳し、翻訳者名を必ず明記する
3 日本側の書類(戸籍謄本など)をそろえる
4 婚姻届と合わせて市区町村役場に提出する
5 受理されれば、日本人側の戸籍に婚姻が記載される

大枠はシンプルに見えますが、実際には「2」の翻訳や「1」の書類取得で時間がかかり、ここが最もトラブルの多い部分です。翻訳は専門家でなくてもできますが、誤訳があると受理されないこともあります。名前の表記揺れ(パスポート名と書類名が一致しないなど)や、生年月日の記載形式の違いなど、細かい部分で差し戻されることも多いです。とくに婚姻要件具備証明書は、国によって取得手続きが複雑で、独身証明書と出生証明書の両方を求められるケースもあります。

日本側の役所での提出とよくある不一致

書類の準備が整ったら、次は日本側の役所での提出です。婚姻届そのものは日本人同士と同じ様式ですが、外国人の国籍・氏名・生年月日等を正確に記載し、証人欄も必ず2名分用意します。外国人側の氏名はパスポート表記を基本にしますが、ミドルネームの扱い、日本語読みの併記、日本での通称の記載など、ケースによって理想的な書き方が変わるため、慎重に確認した方がよい部分です。日本側の戸籍謄本については、本籍地以外で提出する場合に必要となります。

役所では、提出された書類一式が「日本の法律に合っているか」「外国側の婚姻要件が整っているか」「翻訳が適切か」といった観点で審査されます。外国側の必要書類が十分でない場合、その場で受理されないこともあり、追加取得が必要となることもあります。とくに東南アジア諸国や旧ソ連圏の一部では、発行機関が限定されていたり、書類のフォーマットが頻繁に変更されることもあるため、「数年前のネット情報を参考にして書類を集めたら、実は今は別の書類が必要だった」というケースが珍しくありません。

婚姻届受理後に続く「配偶者ビザ」

婚姻届が受理されれば、次に反映されるのが日本人側の戸籍です。戸籍には婚姻日とともに外国人配偶者の情報が記載されます。この戸籍記載は、後の「配偶者ビザ(日本人の配偶者等)」の申請で必ず使用するため、国際結婚では婚姻届とビザ申請がほぼセットで進むと考えると理解しやすいでしょう。婚姻届が受理されただけでは、外国人配偶者が日本に在留できるステータスにはならないため、結婚後すぐに同居を始めたい、または日本で働きたい場合は、早めに配偶者ビザの準備に取りかかることが大切です。

ここで注意したいのは、婚姻届が受理されても、すぐに在留資格の変更(または取得)が許可されるとは限らないという点です。ビザの審査では、婚姻の実態、生活基盤、収入、同居予定などが総合的に確認されます。婚姻届の提出だけで完結するものではなく、「結婚生活を継続するための基盤が整っているか」が重視されるため、婚姻届とビザは必ず同じ目線で考える必要があります。

外国に住む配偶者を呼び寄せる場合の流れ

外国人配偶者が日本国外に住んでいる場合は、婚姻届の受理後に「在留資格認定証明書交付申請(COE)」を行い、日本へ呼び寄せる流れになります。この場合、婚姻届の内容に誤りがあるとCOE審査で疑義が生じることがあり、修正に時間がかかることがあります。つまり、婚姻届の段階での正確性が、その後のビザ手続き全体のスムーズさを左右します。

国によって手続きが変わる理由と大使館手続きの必要性

さらに、国際結婚では「どの国の法律で婚姻が成立するか」という国際私法の考え方が関係しており、法律婚を先に日本で成立させるのか、相手国で成立させるのかによって必要書類や順序が変わることもあります。国によっては、日本での婚姻成立後に在日大使館へ「婚姻届出」を行い、相手国側でも婚姻記録を作る必要があります。これを忘れると、外国側では未婚扱いのままになることがあり、将来的な手続きで支障をきたす恐れがあります。

実務で本当に多いトラブル例

実務上とくに多いトラブルとしては、以下のようなものがあります。

・翻訳の誤り(数字・名前・地名の間違い)
・パスポートと外国書類の表記揺れ
・大使館の案内とネット情報の不一致
・外国側書類の有効期限切れ
・婚姻要件具備証明書の取得不可(母国に本籍登録がないなど)
・親の同意が必要な国で、同意書が不備だったケース
・書類の発行国が政情不安で取得困難なケース

これらは婚姻届を受け付ける市区町村でも判断が難しいため、追加書類の提出を求められることがあります。自治体によって審査の厳しさや確認方法が異なるため、「以前は提出できたが、別の役所では追加書類が必要だった」ということも起こります。

国際結婚の婚姻届は“段取り”がすべて

国際結婚の婚姻届は「書類をそろえて出すだけ」の手続きではありません。結婚生活の基盤づくり、ビザの予定、相手国の法制度、日本の戸籍制度など、複数の制度が重なり合うため、全体像をつかんで計画的に進めることが何より大切です。結婚は家族としての新しいスタートですが、手続きの面では慎重な段取りが求められます。とくに外国側の書類取得や翻訳、役所での補足資料の確認などは専門知識が必要な部分も多く、一度つまずくと数週間単位で遅れることもあります。

国際結婚は、日本と外国の制度が交差するため、準備の大変さはあります。しかし、必要な書類を正確にそろえ、順序を理解して進めれば、婚姻届は必ず受理されます。本記事で紹介した全体像が、これから国際結婚を考えるカップルにとって大きな助けとなり、安心して新しい生活の一歩を踏み出すための参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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