日本の外国人制度は「世界基準」へ向けて静かに姿を変えつつある
日本の外国人関連制度は、ここ数年でこれまでにない変化を迎えています。表向きの制度は同じように見えても、その裏側では審査の視点が変わり、確認項目は増え、運用に必要な労力や費用が確実に大きくなっています。外国人の数が増加し、日本社会のあらゆる場面で外国人の存在が日常の一部になってきた今、制度を支える基盤の強化が避けられなくなっているといえます。
かつては、日本の入管制度は「必要最小限の確認を行い、必要最小限の手数料で運用する」という構造で成り立っていました。しかし、外国人の在留形態が多様化し、働き方も生活形態も複雑になるにつれ、従来のままの仕組みでは対応が難しくなっています。行政の側も、従来の運用方法では追いつかないほどの業務量と責任を抱えるようになり、制度そのものの見直しが必要な段階に入っているといえるでしょう。
こうした中で、制度を国際的な基準に近づけ、長期的に維持可能な形へと整えていく動きが強まっています。その象徴のひとつが、今回の在留手続き手数料の引き上げ検討です。これは単独の出来事ではなく、制度全体の方向転換の一部として理解する方が自然です。
今回の在留手続き手数料の引き上げ検討は、制度全体の「転換点」を示している
政府が今検討しているのは、在留資格の変更・更新、永住許可などの手数料を大幅に見直し、2026年度中の引き上げを実現させるという方針です。長い間、日本は「世界でも例を見ないほど低い手数料」で制度を運用してきました。これはある意味、日本の丁寧な行政体質の象徴でもありましたが、制度を維持する側にとっては負担が大きい状態でもありました。
在留外国人の増加に伴い、審査内容は以前より確実に細かくなっています。申請者の経歴、生活状況、収入、在留の目的、活動の継続性など、様々な情報を総合的に判断する必要があり、審査には高度な知識と判断力が求められます。また、情報を管理するためのシステム更新や、窓口業務の負担増など、制度を支えるためのコストは明らかに上昇しています。
そのような環境下で、日本が従来の「極端に安い手数料」のまま制度を維持し続けることは現実的ではありません。今回の引き上げ検討は、制度がもつ本来の目的──外国人を適切に受け入れ、社会の中で無理なく共存できる環境を整えること──を維持するための、避けて通れない転換点といえるのです。
外国免許切替は、確認内容が増えたことで“制度の質”を守る段階に入っている
外国免許切替は、ここ数年で行政運用の姿勢が変わった分野のひとつです。以前は「必要書類が揃っていれば手続きは比較的スムーズ」という印象が強かったかもしれません。しかし現在は、本国での滞在期間、免許取得の経緯、免許制度の整合性、翻訳文の正確性などが丁寧に確認されるようになっています。
これは単なる厳格化ではなく、制度の信用性を守るために必要な変化ともいえます。免許を通じて交通ルールを理解し、実際の運転が安全に行われるかどうかは、社会全体に関わる重要な問題です。そのため、手続きそのものよりも、審査内容の質が重視される傾向が強まっています。
この運用強化は、申請者にとっては以前より準備が必要になる反面、制度の信頼性を維持するという大きな意義を持っています。その背景には、制度を守るために不可欠な作業量の増加があり、手数料見直しの議論とも密接に関連しています。
経営管理ビザは「本当に事業として成り立つか」が問われる段階に
経営管理ビザも、時代とともに審査の重点が変わってきた制度です。かつては、会社が設立されているか、オフィスがあるかといった形式的要件が大きな判断材料とされていました。しかし現在は、事業計画の実現性や活動の継続性、収益性、地域性との適合、資金の合理性など、事業の中身が丁寧に見られています。
更新時の審査でも、売上の推移や取引関係、税務処理の状況、社会保険の加入状況など、企業が適切に運営されているかが問われる場面が増えています。これにより、申請者の側も事業の実態をより明確に示す必要があり、行政側も本格的な事業審査に近い形で対応する必要が生まれています。
こうした変化は、日本が外国人の事業活動を純粋なビジネスの一環として尊重する一方で、制度を悪用させないための「実質審査」への移行でもあります。審査項目が増えれば、当然制度を支える側の負担も増え、手数料見直しの議論が浮上するのは自然な流れです。
特定技能を中心とする受け入れ制度は、大規模な再設計が続いている
外国人労働政策の中核となりつつある特定技能制度も、運用開始から数年の間に多くの見直しが続いています。技能実習制度の廃止、新たな育成就労制度への移行、支援体制の整備、住環境や労働条件に関する基準の全国統一化など、制度全体が刷新されつつあります。
その背景には、日本社会の構造的な人手不足があります。特に介護、建設、製造、農業、外食など様々な分野で外国人が必要不可欠となり、制度を持続可能な形へ整える必要が生まれています。外国人自身が安心して働ける環境を整えることは、受け入れる側の日本にとっても利益であり、そのためには一定の支援コストや制度維持費が必要になります。
こうした制度再設計は、外国人の権利を守り、受け入れ企業の負担を明確にし、不適切な運用を防ぐことにつながります。その結果、行政の管理・監督機能に求められる役割は以前より重くなり、制度運営にかかるコストも必然的に大きくなっています。
制度は今、「量から質へ」と軸足を移し、持続可能性を重視する段階にある
これまでの日本の外国人政策は、どちらかといえば「受け入れる人数を増やすこと」が中心でした。しかし現在は、受け入れた後の生活支援、雇用の安定、制度の安全性、行政コストの負担など、多方面の課題に対応する必要が生まれています。
制度を支える側の人員確保、情報システムの整備、申請件数の増加に対応する窓口体制など、裏側では大きな負担が積み重なっています。この状況で制度の質を維持していくためには、適切な財源を確保しなければなりません。
今回の在留手続き手数料の引き上げ検討は、外国人を排除するためではなく、制度を維持し、外国人が安心して暮らし働ける環境を守るための「制度の再設計」の一環といえます。日本の外国人政策は今まさに、大きな転換期を迎えているのです。
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