世界で広がる「留学生ビザの見直し」の流れ
外国人留学生は国際交流や学術発展に欠かせない存在です。しかし近年、多くの国で「学生ビザを就労目的で使う」ケースが問題視されるようになりました。授業にほとんど出席せず、在籍証明だけで滞在を延長し、実際は働くことを目的にしている――そんな現状が表面化したのです。
この問題を放置すれば、教育の質は低下し、真剣に学ぶ学生が不利益を被ります。さらに、不正就労が広がれば治安や労働市場にも悪影響を与えます。そのため、各国は次々と学生ビザの制度を見直し、「学ぶための制度」を守る方向に舵を切っています。背景には少子化や人材不足といった各国共通の課題もあり、教育を口実に労働力を確保しようとする流れが目立つようになったことも一因です。つまり、ビザ規制の強化は単に不正防止だけでなく、社会全体の持続可能性を考えるうえでも重要な意味を持つのです。
アメリカ:滞在期間を固定し、監視を強化
アメリカは世界中から留学生を集める国ですが、その規模の大きさゆえに制度悪用も多く起きていました。これまでの学生ビザ(Fビザ)は「在籍中は滞在可能」という柔軟な仕組みでしたが、これが「学校に籍さえあれば実際に学んでいなくても滞在できる」という抜け道になっていました。
そこで新しい規則では、滞在期間を最長4年に固定。延長を希望する場合は改めて審査を受けなければなりません。これにより、学業に真剣でない学生やブローカー経由で入ってきた不正利用者を排除しやすくなります。移民局のデータベースと連携した監視も強化され、大学側も学生の出席や進捗を定期的に報告する体制が求められるようになっています。
もちろん、柔軟性が減ることで「本当に学びたい学生」にも負担が増えるという声はあります。しかしアメリカ政府は、制度を守るために必要な改革だと説明しています。アメリカは学術・研究分野で世界の中心的役割を担っているだけに、この改革が今後の留学希望者の動向に与える影響は大きく、他国の制度にも波及する可能性があります。
オーストラリアとイギリス:教育機関や家族帯同にもメス
オーストラリアでは「ゴーストカレッジ」と呼ばれる問題が深刻化しました。授業をほとんど行わず、学生を籍だけ置かせる学校が乱立していたのです。こうした学校は、留学生ビザを不正に利用する温床となっていました。政府は2024年に150校以上を閉鎖し、さらに140校に警告を出しました。これに加え、生活費や学費の証明を厳しくチェックし、不正利用を根本から断ち切ろうとしています。
一方イギリスでは、留学生が家族を呼び寄せる「帯同ビザ」の制限を強化しました。これまでは修士や博士課程の学生でも家族を帯同できましたが、不正利用を防ぐため研究系大学院生以外は認められなくなりました。また、卒業後に滞在できる期間(Graduate Route)も2年から18か月へと短縮。教育と移民政策を明確に線引きする狙いがうかがえます。
さらにイギリスでは、留学生受け入れによる住宅需要の高騰や地域コミュニティへの影響も議論されています。こうした社会的負担を軽減するためにも、家族帯同や滞在期間の制限は避けられない措置だったといえます。教育の場を守りつつ、社会全体のバランスを取ることが求められているのです。
カナダ:人数と条件をコントロール
カナダも留学生の急増に伴い、住宅不足や公共サービスの逼迫といった社会問題に直面しました。そのため政府は留学生ビザに上限を設け、さらに卒業後に働ける資格(PGWP)の対象を一部のプログラムから外しました。
申請時の条件も厳格化され、生活費や貯蓄証明をより細かく提示しなければなりません。これにより「低コストで働くために入国する」ケースを減らし、本当に学ぶ意志のある人を優先する仕組みに改めています。特に、人気の都市部で深刻化していた住宅不足問題を背景に、学生数の増加をそのまま許すことは難しくなっていました。
カナダは多文化主義を掲げる国として留学生に寛容な姿勢を示してきましたが、近年は制度の持続性を重視する方向へと舵を切っています。受け入れ数をコントロールすることで社会資源を守り、結果的に真剣に学ぶ留学生により良い環境を提供しようという考え方です。
共通するキーワードは「監視」「制限」「透明性」
国ごとに方法は違っても、共通点は明らかです。
- アメリカは「滞在期間を固定」
- オーストラリアは「不正校を閉鎖」
- イギリスは「家族帯同を制限」
- カナダは「受け入れ人数や条件を制限」
どれも「教育を隠れ蓑にした就労」を防ぐことを目的としています。短期的には留学生数が減り、産業界が人手不足に悩む可能性があります。しかし長期的には、教育の質を守り、社会全体の信頼性を高める効果が期待されています。
留学生にとっても「真面目に学ぶ人ほど報われる制度」になっていくでしょう。これからはアジア各国でも同様の改革が広がる可能性があり、国際的な留学のあり方はますます透明で厳格なものへと進化していきそうです。制度の信頼性を高めることは、結果的に本物の教育環境を整えることにつながり、受け入れる国にとっても学生にとってもプラスになると考えられます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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