入管法は厳しくなっている——それでも外国人労働者が増え続ける理由とは

入管法の厳格化が進む背景とその実態

ここ数年、日本の出入国管理制度は大きな転換期を迎えています。とくに2023年の改正入管法では、難民申請制度や永住許可制度に関する取り扱いが厳格化され、「人道配慮」よりも「制度の秩序維持」が優先される方向へと舵が切られました。たとえば、難民申請を3回以上繰り返すと、特別な理由がなければ強制送還の対象となる規定が新たに設けられました。従来のように申請を繰り返すことで日本に滞在し続けることは、もはや難しくなっています。

また、長期収容を避けるための「監理措置制度」が導入され、収容に代わって民間の支援者が対象者を生活面で監督する制度も始まりましたが、支援者側に過剰な負担がかかることから、実際の運用には限界があります。永住資格の運用も変わりつつあり、税金や保険料の未納、あるいは軽微な法令違反であっても、永住許可が出ない・取り消されるといったケースが出てきています。永住資格がもはや「ゴール」ではなくなってきているのです。

こうした動きの背景には、不正滞在や制度悪用への対策がある一方で、外国人を「受け入れる」制度ではなく「管理する」制度へと変化させたい意図が透けて見えます。その結果、「厳格な制度運用」と「人道的配慮」の間で揺れる入管行政が、当事者にとっては理不尽に感じられることも少なくありません。

外国人労働者は増え続ける――「必要とされている現実」

このように入管制度の締め付けが強まる一方で、日本では外国人労働者の数が右肩上がりに増え続けています。2024年時点で、国内の外国人労働者数は230万人を超え、過去最多を更新しました。労働力として必要とされているのは明らかであり、特に製造業、介護、建設、サービス業など人手不足の深刻な分野で外国人の存在は欠かせなくなっています。

出身国別に見ると、ベトナム、中国、フィリピンといったアジア諸国が大半を占めています。在留資格としては「専門的・技術的分野」(高度人材)が増加しており、技能実習や特定技能といった制度枠も拡充されています。つまり、日本は一方で制度を厳しくしながら、もう一方では人材を必要として制度を広げているという、矛盾した状況にあるのです。

これは、日本の人口減少と少子高齢化という社会構造的課題に直面している以上、避けられない現実でもあります。2040年には1000万人規模の労働力不足が予測されており、今後ますます外国人労働者への依存度は高まると見られています。ただし、それに見合った生活保障や権利保護の整備が伴っていないことが、制度運用における最大の懸念点となっています。

永住よりも「帰化」へ誘導される構造的意図

こうした中、永住資格の取得が年々難しくなる一方で、「帰化」のハードルは相対的に低く設定されているのではないか、という声もあります。行政上、永住者は依然として「外国人」として扱われ、在留資格の管理対象となります。しかし帰化すれば日本国籍を取得し、法的にも完全に「日本人」となります。管理コストも軽減され、行政としては制度運用がしやすくなるのです。

実際、2023年以降、永住者に対する厳格な審査・取消事例が相次いで報告される一方で、帰化申請の件数は増加傾向にあります。これは偶然ではなく、むしろ政策的な誘導があるのではないかという指摘があります。行政にとっては、「帰化」という形で外国人を選別し、制度内に“完全に取り込む”ことの方がメリットが大きいのです。

もちろん、帰化には厳しい要件(日本語能力、納税、素行、収入など)がありますが、それらを満たした外国人であれば、永住よりもむしろ安定した生活が得られる可能性も高いのが実情です。つまり、今の日本では「長く住みたい」なら永住ではなく帰化を目指すべきだという空気が、制度の運用からにじみ出ているのです。

以上のように、日本の入管政策は現在、大きな岐路に立たされています。表面上は制度の厳格化が目立つ一方で、労働力としての外国人は不可欠な存在として増え続けています。そして、その先には「永住」よりも「帰化」へと誘導しようとする制度運用の流れが静かに進行しています。この矛盾をどう乗り越えていくのか、日本社会にとっての真の共生とは何かが、今まさに問われているのかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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