ここ数年で「厳しくなった」と感じるのはなぜか
最近、技術・人文知識・国際業務、経営管理、技能実習、家族滞在、永住、さらには留学ビザに至るまで、さまざまな在留資格の運用が「以前より厳しい」と感じるという声が増えています。実務に携わっている人であれば、その空気を肌で感じているでしょう。書類の不備や説明の不足に対する指摘が細かく、審査期間も長期化する傾向が強まり、結果として不許可リスクが高まっているという印象も広がっています。
しかし、「厳格化」という言葉だけでは不十分で、その背景には日本社会全体の変化、国際的な潮流、そして制度の目的とのズレが蓄積してきたことが挙げられます。表面だけを見て「入管が急に厳しくなった」と考えるのではなく、なぜそのような方向に動いているのかを理解することが、これからの在留資格手続きにおいて非常に重要になります。
また、利用者側が「なぜ厳しくするのか」を理解していないと、不必要な不安を抱えたり、逆に重要な点を見落としたりする危険もあります。ここでは、厳格化の本質を丁寧に整理し、どこに気をつけるべきかを深く掘り下げていきます。
背景①:制度本来の趣旨と現実の乖離が広がった
まず最も大きい要因は、「制度の趣旨と実態が大きく離れてしまった」ことにあります。
技人国の例
技人国はそもそも「専門性のある職種」に就くための在留資格であり、学歴や職歴と業務内容が関連していることが前提です。ところが、現実には – 実際の業務が専門性の低い単純作業 – 派遣先で職務内容が入管申請時の説明と異なる – 給与が明らかに日本人の同等業務より低い といったケースが増え、制度目的と一致しない利用が横行していました。
留学生の例
留学ビザは本来「勉強が主」であり、アルバイトはあくまで補助的なものです。しかし、実態は – 週28時間を超える就労 – ブローカーによる「留学を装った就労」 – 在学実態が曖昧 といった問題が続出しました。
経営管理ビザの例
「実体ある事業の運営」を前前提としているのに – 資本金だけ入れて実態がない – 机上の事業計画 – 名義貸し的な会社 などが長年問題視されてきました。
こうした「制度の建前と実態の乖離」を修正するため、行政は運用を締めざるを得なくなったのです。これは入管だけの判断ではなく、長年の実務現場の課題が積み上がった結果と言えます。
背景②:日本社会の空気の変化——不安・誤解・偏見とどう向き合うか
次に大きいのが、日本社会全体の空気が変わってきているという点です。
日本はこれまで「移民国家ではない」という建前を保ってきましたが、現実には多くの産業が深刻な人手不足を抱え、外国人労働者を受け入れざるを得ない状況になっています。しかし、その一方で – 外国人犯罪の報道だけが注目される – 文化的な違いへの戸惑い – 地域社会での摩擦 – SNSでの誇張された不安 が積み重なり、「外国人受け入れ」に対する国民意識が揺れています。
この矛盾した状況の中で、行政としては 「誰でも簡単に入れてしまっては社会的反発が強まる」 という政治的・世論的な配慮を無視することができません。
つまり、厳格化には 国民の安心感を保つための措置 という側面もあるのです。
また、海外では移民の大量流入による治安や労働市場の混乱が大きな政治問題になりました。日本がその二の舞を避けたいという意図も読み取れます。
「必要な人は受け入れる。しかし、制度を悪用する者は排除する。」 というメッセージを入管庁が発信せざるを得なくなった背景には、社会的な不安の高まりが確かに存在します。
背景③:人口減少と労働力不足——“誰を入れるか”の選別が強まる
日本は急速に人口が減少し、確実に人手不足は深刻化します。しかし「誰でも受け入れる」ことはできません。
この中で求められているのは – 日本社会の維持に役立つ人 – 日本企業の競争力に貢献する人 – 税金を安定して納められる人 こうした人材です。
つまり、厳格化は「受け入れ人数を減らすため」ではなく、
“選抜を厳密にするための動き”
と見る方が正確です。
たとえば – 経営管理ビザは資本金と雇用を重視 – 技人国は専門性の確認を強化 – 育成就労(元技能実習)は転籍可能・待遇改善 という方向に動いており、これは 「質の高い外国人に来てほしい」 という政策意図の表れでもあります。
また、帰化の基準見直し(検討中)や手数料の引き上げ(2026年度)も同じ流れの中にあります。
背景④:悪質事例への対応——“一部の問題が全体を厳しくする”
外国人の入国管理は、不正が発生すると一気に行政が締めるという特徴があります。そしてこの数年、悪質な手口が問題になりました。
留学ビザで来日しながら学習実態がなく、実質的にアルバイトのためだけに滞在しているケース。
技能実習制度において、賃金不払い、過重労働、暴力、パスポートの取り上げなど、深刻な人権侵害が発生したケース。
経営管理ビザでは、名義貸し会社や架空事業、実態のないオフィスを利用した申請など、実体の欠如が問題となったケース。
技人国の分野でも、工場のライン作業や仕分け作業といった専門性のない単純作業に従事させるケースが確認されています。
こうした問題はごく一部の事例ですが、行政は“制度が歪む”と非常に敏感に反応します。
その結果、 善意の外国人や真面目な企業までもが厳格な審査の影響を受ける という状況が生まれています。
これは残念ながら、どの国の移民制度でも同じ現象です。
では、どう向き合うべきか——厳格化の時代を生き抜くポイント
厳格化の方向性が明確である以上、受け入れ企業・外国人本人・行政書士などの支援者は「対策」を理解していく必要があります。
① 形式ではなく実態を整える 建前の書類では審査を突破できなくなる時代。実際の業務内容、労働条件、事業の実体が最重要。
② 説明責任を果たせる体制 入管は説明が整っている申請を歓迎します。逆に「説明不足」はそれだけで不許可理由になってしまうほど。
③ 届出義務を忘れない 転職・退職・活動機関などの届出は忘れると不利。これはあなたが以前の記事で書いてきたテーマそのもの。
④ “質”で勝負する 今後は、 – 日本語能力 – 職歴・専門性 – 在留中の安定性 がより重視されます。
厳格化は「排除」ではなく「制度の再調整」
厳しくなっていると感じるのは事実ですが、その本質は 外国人を排除するための厳格化ではなく、制度を健全化するための厳格化 です。
これは、日本社会・国際情勢・制度歪みの是正など、複数の要因が重なって生まれた流れであり、単なる「冷たさ」や「締め付け」と捉えるべきではありません。
むしろ、真面目に働く外国人、実態ある企業、誠実に支援する行政書士にとっては、 長期的にはプラスになる方向 だと言えます。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。
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