特定技能の現場で起きている矛盾とは?企業と外国人が直面する課題と行政書士の役割

特定技能制度とは何か――「人手不足対策」として導入された新たな在留資格

2019年に改正入管法により創設された「特定技能」は、日本国内の深刻な人手不足を背景に導入された在留資格制度です。特定技能は、日本で就労を希望する外国人が、一定の技能と日本語能力を有することを条件に、即戦力として働けることを目的としています。

制度には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、前者は14業種に限定され、在留期間は通算5年までとされています。後者はより高度な技能を有する者を対象とし、在留期間の更新が可能で、家族帯同も認められています。

この制度は、技能実習制度のように「研修」や「育成」ではなく、最初から労働力としての就労を前提としている点が大きな特徴です。制度上は明確な受け入れ基準が定められており、労働者本人は技能試験・日本語試験に合格することで在留資格を取得できます。一方で企業側には、生活支援や契約管理など、広範な責任が課せられています。

「働けるはずなのに、働けない」――特定技能の現場で起きている矛盾

特定技能制度は、制度上は理にかなった設計になっていますが、実際の現場では多くの外国人が制度の“想定外”に苦しんでいます。

例えば、十分に働いていても契約書の形式不備や支援計画の未履行があると、更新申請が不許可になる事例が後を絶ちません。外国人からすると「真面目に働いているのに、なぜ?」という疑問しか残らず、日本社会への不信感すら抱くことになります。

また、「技能実習と違って転職できる」と誤解して来日したものの、実際は転職先が見つからず、結果的に帰国を余儀なくされるケースもあります。企業側が「途中で辞められては困る」と考え、転職を阻むような慣習が残っている業界もあり、制度と実態にズレが生じています。

「働ける能力がある」「意欲もある」のに、制度要件の形式を満たさないというだけで、継続的な在留ができなくなる――このような“書類と実態の乖離”こそが、特定技能制度の隠れた課題と言えるでしょう。

企業側にも重くのしかかる支援責任――現場とのギャップ

特定技能では、外国人を雇用する企業にも明確な義務があります。とりわけ注目すべきなのが、「支援計画」の策定とその実施です。これは単なる入管手続きではなく、実際に外国人が安心して生活・就労できる環境を整えるための“実務”です。

支援計画の内容には、入国時の空港出迎え、適切な住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、定期面談、苦情相談窓口の設置、地域との交流支援など、入管庁が定める10項目が含まれています。これらの支援が形式的になっていると、申請書類の内容に疑義が生じ、結果として在留資格の不許可につながる可能性があります。

実際、「登録支援機関に委託しているから大丈夫」と安心していた企業が、委託先が実際には何も支援していなかったために、在留資格の更新が不許可になったという事例もあります。企業が「実施責任主体」であるという意識が希薄なままでは、制度運用に耐えられないのです。

また、現場の管理者や日本人従業員が「支援計画」をまったく把握しておらず、言語や文化の違いによるトラブルを放置してしまうケースもあります。こうした“現場と制度のねじれ”が放置されると、最も被害を受けるのは、弱い立場にある外国人労働者です。

行政書士は“手続き屋”ではない――制度と現場をつなぐ専門職

こうした課題に対応するには、書類作成の表面的な知識だけでは不十分です。制度を本当に機能させるためには、実務と法制度を橋渡しする専門家の関与が欠かせません。行政書士は、その担い手として、企業と外国人をつなぐ極めて重要な役割を果たしています。

たとえば、支援計画が制度要件を満たしているか、形式的な説明ではなく実際に運用可能か、在留申請に必要な契約書が実態と一致しているかなど、行政書士は実務面からの目線で助言・調整を行います。

また、入管から追加資料が求められたとき、すぐに的確な対応ができる体制を整えておくことも重要です。形式的な書類提出にとどまらず、「この外国人にとっての生活・就労の安定は、どう確保されているのか?」という本質的な問いに対し、行政書士は第三者の視点から改善提案を行います。

さらに、外国人本人が契約内容や支援制度を本当に理解しているか、文化や言語の違いによる誤解が生じていないかにも目を配る必要があります。行政書士は単なる“通訳”ではなく、“通じ合わせる”役割を担う存在でもあるのです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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