EB-5投資家ビザでアメリカ永住権を取得――創設から最新改革までを徹底解説

EB-5ビザの誕生と制度の背景

アメリカ合衆国のEB-5投資家ビザは、1990年11月に成立した移民法改正(Immigration Act of 1990)によって創設されました。当時のアメリカ政府は、国内経済の活性化と雇用創出を課題とし、外国からの投資を呼び込むことで解決を図ろうとしました。そのため、外国人投資家が一定額を投資し、雇用を創出することを条件に永住権(グリーンカード)を与える仕組みが導入されたのです。

この制度の特徴は、学歴や英語力を問わず、純粋に資金力と経済貢献を評価の基準とした点にあります。つまり、専門的スキルや高い語学力を示さなくても、資金を投じてアメリカ社会に参加できる門戸が開かれました。これは世界の富裕層、特に子どもの教育や家族の将来を重視する層にとって大きな魅力となりました。

創設当初の最低投資額は50万ドル(特定地域)と100万ドル(一般地域)とされ、対象となるのは自らの事業立ち上げでした。このためリスクが大きく、当初は利用者が限られていましたが、その後制度の運用が改良され、広く普及していくことになります。

リージョナルセンター制度の導入と普及

EB-5が大きく広まるきっかけとなったのは、1992年に導入されたリージョナルセンター制度です。実際には1993年にパイロットプログラムとして本格開始されたとも記録されています。この制度では、政府認可を受けた団体が不動産開発など地域経済プロジェクトに投資資金を集め、雇用創出を行うことが可能となりました。

この仕組みの利点は、投資による「間接雇用」もカウントできる点にありました。例えば大型の不動産開発プロジェクトでは、建設業者や関連サービス業の雇用も算入できるため、投資家が条件を満たしやすくなったのです。その結果、EB-5の利用は急速に拡大しました。

2000年代には特に中国人投資家の利用が爆発的に増加しました。背景には「子どもをアメリカで教育させたい」という需要があり、EB-5はその手段として選ばれました。この結果、申請件数が急増し、ビザ発給の待機が数年単位となる問題も生じました。また、リージョナルセンター経由の投資案件で詐欺や開発失敗が発生し、「投資資金を失った上に永住権も得られない」という深刻な被害も報告され、制度の信頼性に疑問が投げかけられることになりました。

改正と混乱の時代

2010年代に入ると、EB-5制度は依然として人気を集めつつも、制度運用の課題が大きく浮上しました。特に2016年には「Jay Peak事件」と呼ばれる大規模詐欺が明らかになり、投資家の資金が流用される事態が発生しました。これにより制度全体の透明性と監視の必要性が強く意識されるようになりました。

2019年11月21日には大幅な制度改正が行われ、最低投資額が引き上げられました。特定地域(TEA)では50万ドルから90万ドル、一般地域では100万ドルから180万ドルへと増額され、投資家にとって負担が大きくなりました。この改正に先立ち、世界中で駆け込み申請が殺到しましたが、改正後は新規申請数が急減しました。さらに2021年6月には連邦裁判所により2019年の規則が無効とされ、再び投資額は従来水準に戻るという混乱が起こりました。

同年、議会でリージョナルセンター制度の延長合意が得られなかったため、制度自体が一時的に停止されました。この停止期間には申請が受け付けられず、進行中の案件も進展せず、世界中の投資家が宙に浮いた状態となりました。EB-5の信頼性は揺らぎ、多くの投資家が不安を抱える時期となったのです。

2022年以降の改革と現在の姿

2022年3月、バイデン大統領が署名した「EB-5 Reform and Integrity Act of 2022」によって、制度は再構築されました。この法律によりリージョナルセンター制度は2027年まで延長され、監視体制が強化されました。透明性を高めるため、リージョナルセンターの登録や財務報告が義務付けられ、過去に問題となった不正リスクの低減が図られました。

投資額は80万ドル(TEA)と105万ドル(一般地域)に再設定され、インフラ投資など社会的意義のある分野への投資に対しては優先審査枠も設けられました。これにより、長期の待機問題に苦しんできた投資家にとって、新たな魅力が生まれています。

2025年現在、EB-5制度は創設から30年以上を経て、数度の改革と混乱を乗り越えながら続いています。その間に人気の浮き沈みはありましたが、「資金を投じて家族ごとアメリカ永住権を得られる」という唯一無二の価値は失われていません。特に教育や生活の質を求める家庭にとって、依然として大きな選択肢となっています。

もっとも、制度改正による条件変更、投資先プロジェクトのリスク、そして多額の資金が必要となる点は常に課題です。EB-5は誰にでも開かれた制度ではなく、十分な資産を持ち、リスクを取ってでもアメリカ永住を実現したい人々だけが挑戦できる道だといえるでしょう。

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