不法就労助長事件から見える現場の課題
近年、外国人を雇用する企業や事業者が、不法就労助長の疑いで摘発される事例が相次いでいます。この罪は、在留資格がない、または在留資格の条件を満たしていない外国人を雇用した場合に成立し、経営者にとっては重大な法的リスクとなります。
ある事例では、長期間にわたって在留資格のない外国人を現場で働かせていた経営者が逮捕されました。供述では「経営が厳しく、安く雇える人材だった」と述べていますが、これはまさに短期的な人件費削減を優先した結果です。
こうした事案は、一部の業種だけでなく幅広い分野で起こり得ます。人手不足が続く中、外国人労働者は現場の重要な戦力となっていますが、適法な雇用手続きが行われなければ、経営者自身や会社全体に大きなダメージを与える可能性があります。
不法就労助長罪と摘発の広がり
不法就労助長罪は、不法残留や資格外活動など、法的に認められない就労を外国人にさせる行為を処罰する規定です。罰則は懲役刑や罰金刑で、法人も対象になる場合があります。
違法とされる行為は、単なるオーバーステイだけではありません。例えば、留学生が許可された週の労働時間を超えて働くケースや、在留資格で認められていない職種に就かせるケースも含まれます。重要なのは、経営者が「知らなかった」では済まされないという点です。「注意すればわかったはず」という状況でも責任を問われます。
また、近年は製造業や建設業だけでなく、飲食、介護、物流、小売などの分野でも摘発事例が増えています。これは、外国人雇用の一般化に伴い、雇用管理や資格確認が追いつかないケースが増加していることを示しています。
不法残留者は減少も、摘発は増加
不法残留者の数は、入国管理体制の強化や国際的な情報共有により、過去に比べて減少しているとされています。しかし、不法就労助長での摘発件数は減っておらず、むしろ増加傾向にあります。
これは、法改正や運用の厳格化により、以前は見過ごされていたグレーゾーンの雇用も取り締まりの対象となっているためです。人手不足が深刻な業種では、即戦力を求めるあまり、資格確認が不十分なまま雇用が進むことがあります。その結果、発覚した際には罰則や信用の失墜という、長期的に見て大きな損失を被ることになります。
特に、複雑化する在留資格制度の中で、それぞれの条件を正確に理解せずに採用や配置を行ってしまうケースは危険です。違反は意図的でなくても成立するため、日常的な労務管理の中での防止策が欠かせません。
行政書士の視点から見た企業の責任と対策
行政書士として現場を見ていると、違法雇用の多くは「知らなかった」「確認方法がわからなかった」という理由で起きています。しかし、法的にはこれらは免責の理由にはなりません。外国人を雇用する場合、採用時の在留カード確認、資格条件の把握、期限管理は最低限の義務です。
採用時には、在留カードの原本を必ず確認し、資格や期限、就労制限の有無を記録します。外国人雇用状況届出の提出も義務であり、怠れば別の法令違反にもつながります。採用後も、在留期限の数か月前には更新状況を確認し、労働時間や業務内容が資格条件に適合しているかを継続的にチェックする体制が必要です。
また、経営が厳しい状況であっても、短期的な人件費削減を目的に不法就労者を雇用することは、最終的に会社の存続を脅かす行為です。適法な採用ルートの活用、技能実習や特定技能といった制度の適正利用、日本語教育や職場環境整備など、長期的な視点に立った人材確保が求められます。
外国人雇用は、法令遵守と人権尊重を両立させてこそ、企業にも社会にもプラスになります。行政書士はそのための手続きや体制整備を支援できる立場にありますので、少しでも不安や疑問があれば早めに専門家へ相談することをお勧めします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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