日本語力が高校進学に与える影響と進路・在留資格の実際

日本語力が高校進学に与える影響

外国につながる子どもたちにとって、日本での高校進学は将来を左右する大きな節目です。制度上、外国籍であっても日本の高校に進学することは可能です。しかし、現場では日本語力の不足が進学の成否に深く関わっています。学力が十分にあっても、日本語が理解できないために試験で力を発揮できない、あるいは進学後に授業についていけなくなるといったケースが多く見られます。

公立高校の入試は、基本的に日本人と同じ問題が使われます。国語、数学、理科、社会、英語といった教科すべてが日本語で実施されます。特に数学や理科であっても、長い日本語の設問を素早く正確に理解することが前提とされます。日本語力が不足していると、内容を理解する前に時間が足りなくなり、本来の力を出し切れないまま試験が終わってしまうことも少なくありません。面接でも日本語での受け答えが求められるため、言語力は合否を大きく左右します。

一部では外国人生徒向けの特別選抜制度が用意されていますが、情報が十分に届いていないことが多く、通常の入試を受けて不合格になるケースもあります。こうした情報格差や日本語力の差は、高校進学率の差として表れています。全国平均では中学卒業後の高校等進学率は非常に高い水準にありますが、日本語指導が必要な生徒の進学率はそれを下回る傾向があります。日本語力の有無が、その後の進路に大きな影響を及ぼしているのが現実です。

小中学校での支援と高校進学の壁

小中学校の段階で十分な日本語支援を受けられるかどうかは、高校進学時の日本語力に直結します。通訳が常に学校にいるわけではなく、入学時や懇談といった限られた場面で派遣されることが多いのが実情です。授業中は日本語指導員や支援員が巡回して一部の児童生徒をサポートする形が中心で、すべての子どもに十分な支援が行き届く体制が整っているとはいえません。特に転入時期が遅く、日本語を学ぶ時間が短い子どもほど、言語面の準備が追いつかないまま高校入試を迎える傾向があります。

学校生活や教科内容の理解にも日本語は欠かせません。中学校の段階で日本語支援が十分でないまま進学期を迎えると、入試の問題文が読めない、面接で意図が伝わらない、願書の準備段階でつまずくなど、複合的なハードルが生じます。こうした状況は本人や家族の努力だけでは解決できず、制度と支援の限界がそのまま進学の壁となって現れています。

高校に進学できなかった場合の主な進路

高校に進学できなかった場合でも、進路が閉ざされるわけではありません。代表的な選択肢として、定時制高校、通信制高校、夜間中学への進学、そして翌年の高校再受験があります。いずれも、それぞれの事情に合わせて学び直しの機会を得る手段となっています。

定時制高校は午後から夜にかけて授業が行われ、働きながら通う生徒も多く見られます。通信制高校は自宅学習を基本とし、月に数回の登校によって単位を取得する方式です。日本語力に不安がある生徒でも、自分のペースで学習できる点が大きな特徴です。夜間中学は義務教育課程を学び直すための場であり、日本語力や基礎学力を身につけ、翌年の高校再受験を目指す道が開かれています。進学や再受験を考える場合、補習制度などを活用して日本語と学力を整えることが鍵となります。

この段階で重要なのは、何らかの在籍や活動を継続することです。中学校を卒業した後、進学も就労もしていない空白期間が長引くと、在留資格の更新時に説明を求められる場合があります。夜間中学や通信制、定時制といった制度を活用しながら、自分の進路を再構築していくことが現実的な対応になります。

在留資格と年齢の考え方

高校や夜間中学への進学は、在留資格との関係でも重要な意味を持ちます。日本に親と一緒に住んでいる子どもの場合、もっとも一般的なのは家族滞在のまま高校に進学する形です。家族滞在は、在留資格を持つ親に扶養されて生活している配偶者や子どもを対象としており、高校進学のために留学ビザへ切り替える必要はありません。親と離れて単身で日本に来て高校に通う場合は留学ビザが用いられますが、日本で生活している家庭では家族滞在のまま進学するのが基本です。

夜間中学に通う場合も、専用の在留資格は存在しません。多くの生徒は家族滞在、定住者、永住者など既存の資格を持ったまま在籍しています。夜間中学は義務教育課程であるため留学ビザの対象にはならず、新たに留学資格を取得して通うことはできません。空白期間を避け、在籍を続けることで、更新時に活動内容を説明しやすくなるという実務上のメリットがあります。

家族滞在には法律上の年齢制限は定められていませんが、実務上は扶養されている子であることが前提とされます。高校在学中、つまりおおむね18歳までは、在学と扶養が明確なため更新も比較的スムーズに認められます。高校卒業後は進学や就職といった具体的な活動が必要になり、何もしていない状態では更新が難しくなっていきます。20歳を超えると扶養の実態が厳しく見られるようになり、多くの場合、留学や就労、定住者など別の在留資格に切り替えていくことになります。

日本語力の不足は、高校進学やその後の進路に現実的な影響を与えます。小中学校で十分な支援を受けられないまま入試を迎える生徒も多く、試験問題や面接で言語の壁に直面することは少なくありません。しかし、高校に進学できなかった場合でも、定時制高校、通信制高校、夜間中学、再受験といった多様な制度を活用することで、進路を再び切り開くことは可能です。さらに、これらの進路は在留資格の維持とも密接に関わっています。空白期間を避け、在籍や活動を明確にしていくことが、進路と在留の両面を安定させる鍵になります。年齢が上がると家族滞在の更新は厳しくなりますが、学びや活動を継続することで、将来の選択肢を広げることは十分可能です。

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