短期滞在ビザ延長の基本と原則
短期滞在ビザは、日本に一時的に滞在するための在留資格であり、観光・親族訪問・商用など、非営利的な活動を目的としています。一般的に滞在期間は15日、30日、90日のいずれかが付与され、いずれも上陸時に決定されます。特に観光目的の場合は90日が上限であり、それを超えることは原則として認められていません。短期滞在ビザは、日本での滞在を終えたら期限内に必ず出国することを前提としており、延長はあくまで例外的な措置です。
「延長」という言葉を聞くと、申請さえすればある程度は認められるのではないかと想像する人もいますが、実務上はそうではありません。短期滞在ビザの延長は、特別かつやむを得ない事情がある場合に限られ、その件数は非常に限られています。公式の統計は公表されていませんが、入国管理局の実務担当者や経験者の証言からも、全国的に見ても年間でごく少数しか認められていないことがわかります。つまり、延長を前提に旅行計画や訪問スケジュールを組むことは危険であり、あくまで例外的な救済措置として考えるべきものです。
延長が許可される背景には、申請者が帰国できない合理的な理由が存在する必要があります。この「合理的な理由」は、本人の希望や都合ではなく、外部的要因によって滞在延長が必要となった場合を指します。たとえば、滞在中に重病を患い治療が必要になった、親族が急病で介護が必要になった、帰国予定の航空便が欠航し代替便が長期間確保できないなどのケースです。単なる旅行延長希望や、観光予定の変更などは理由として認められません。
延長が認められるケースと稀少性
短期滞在ビザの延長が許可される事例は非常に限られており、「稀」という表現が適切です。過去の事例としては、観光で来日した高齢者が日本滞在中に大きな病気を発症し、医師の診断書により治療が継続的に必要と認められたケースや、親族訪問中に介護が急に必要になったため帰国を延期せざるを得なかったケースがあります。また、近年では新型感染症や国際情勢の悪化、自然災害によって帰国便が長期的に運航停止となり、帰国が物理的に不可能になった事例も報告されています。
これらの事例に共通するのは、延長の理由が申請者の意思や嗜好によるものではなく、外部の要因によって滞在延長が必要とされた点です。さらに、その理由を裏付ける明確な証拠が求められます。病気であれば診断書や治療計画書、介護であれば要介護者の状態を証明する公的書類や医師の所見、航空便欠航であれば欠航証明書や航空会社からの連絡文書などです。これらの証拠が揃っていなければ、申請はほぼ間違いなく不許可となります。
延長件数についての公的データは存在しませんが、現場の感覚では全国でも年間数十件程度と見られており、短期滞在ビザ全体の発給件数から考えると、ごくわずかな割合に過ぎません。このため、「延長はできる場合もある」という情報だけを見て期待するのは非常に危険で、現実的には「延長はほぼ不可能」と考えて準備する方が安全です。
申請のタイミングと必要書類
短期滞在ビザの延長申請は、在留期限が切れる前に行わなければなりません。申請先は居住地を管轄する地方出入国在留管理局で、郵送ではなく原則対面での申請です。申請可能なタイミングは実務上の基準として「付与された在留期間の半分を過ぎてから」とされています。例えば90日間の在留許可を受けている場合は46日目以降から申請できます。この基準は入管法や省令に明記されたものではありませんが、入管窓口やビザ専門サイトで広く案内されており、事前相談時にもほぼ例外なくこの説明が行われます。
申請に必要な書類は多岐にわたります。まず、在留期間更新許可申請書とパスポート、滞在先住所を証明する住民票やホテルの滞在証明などが必要です。さらに、日本での生活費を支える資力を証明するための預金通帳や送金記録、日本にいる親族や知人からの身元保証書なども求められます。そして最も重要なのが延長理由を裏付ける証拠資料です。病気の場合は診断書、介護の場合は介護が必要であることを示す書類、帰国便欠航の場合は航空会社の公式な証明など、客観的な証拠が必須です。
また、延長後に必ず帰国する意思があることを示すため、帰国便の予約確認書や航空券などの提出も有効です。これにより「延長後に不法残留するつもりはない」という意志を証明できます。これらの準備が不十分であれば、申請は受理されても審査で不許可になる可能性が非常に高くなります。
延長申請の実際と注意点
延長申請を行った場合、審査には通常2週間から1か月程度かかります。その間に在留期限が切れてしまわないよう、期限ギリギリではなく余裕を持った申請が重要です。申請中に在留期限を迎えた場合でも、結果が出るまでの間は「特例期間」として適法に滞在できますが、不許可の場合は速やかに出国しなければなりません。延長が許可されると、追加で付与される期間は30日や90日など、元の滞在日数と同等かそれ以下となることが多いです。
注意しなければならないのは、延長が認められたとしても、それはあくまで「短期滞在」のままであるという点です。就労は認められず、他の在留資格への変更も原則としてできません。短期滞在から就労や留学ビザへ直接変更することは、婚姻などの特別な事情がない限り認められません。また、観光目的での延長はほぼ不可能であり、「まだ観光したい」という理由では許可は下りません。
さらに、延長を申請する場合は、結果が不許可でも予定通り帰国できる準備を整えておく必要があります。航空券の手配や帰国後の生活計画もあらかじめ準備し、不測の事態に備えることが大切です。短期滞在ビザの延長はあくまで例外中の例外であることを理解し、延長に頼らないスケジュールを立てることが、トラブルを防ぐ最大のポイントです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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