疎遠だった親が亡くなった|財産も借金もわからないとき、まず何をすればいい?

何年も連絡を取っていなかった親が亡くなった。役所や親族から知らせを受けて、自分が相続人だと分かった。けれど、親がどんな財産を持っていたのか、借金があるのかどうか、まったく見当がつかない。

この状態で最初にすべきことは、遺産をどう分けるかを考えることではありません。何があるのかを確かめることです。

目次

「何も分からない」という相続は珍しくない

ご相談をお受けしていて、特別なケースだとは感じません。次のような事情は、どれもよくあることです。

よくある状況

十数年以上会っておらず、住所も知らなかった。親が離婚して別居し、その後の生活を知らない。他の兄弟だけが親と行き来していた。晩年は施設に入っており、荷物も持ち物も残っていない。連絡は年賀状だけで、暮らしぶりまでは知らなかった。

疎遠であっても、相続人であることに変わりはありません。財産を受け取る権利があり、同時に、借金を引き継ぐ可能性もあります。だからこそ、実際に何があるのかを把握しないまま時間だけが過ぎるのが、いちばん困る状態です。

通帳が一冊も見つからない

預貯金の調査でご相談が多いのは、次のような状態です。

家を片付けても通帳もキャッシュカードも出てこなかった。

昔近所にあった銀行しか知らない。今も口座があるのか分からない。

年金がどこに振り込まれていたのかも分からない。

一つだけ通帳が見つかったが、残高が思っていたより少なかった。他にもあるのではないか。

通帳が手元になくても、預貯金の有無を確かめる方法はあります。心当たりのある金融機関に対し、相続人の立場で照会をかけていく形です。

ここで知っておいていただきたいのは、一つの銀行に照会すれば全国の口座が分かる、という仕組みではないという点です。ある程度の絞り込みが必要になります。生前の住所、勤務先、よく利用していた地域といった手がかりから、どこを当たるかを組み立てていきます。

フジ行政書士事務所では、手がかりが少ない状態からのご相談もお受けしています。「通帳が一枚もない」というところから始まる調査は珍しくありません。

自宅で書類の入った箱を前に、何から手をつけるか考え込む男性 手元にある書類だけでは、何があるのか分からないことがほとんどです

生命保険に入っていたかどうかも分からない

保険証券が見つからないというご相談も多くいただきます。

保険に入っていたかどうかすら分からない。

入っていたらしいが、どこの保険会社か知らない。

保険会社からの郵便物が何も届かない。

生命保険については、契約の有無を確認する仕組みがあります。証券が見つからなくても、加入していたかどうかを調べる手立てはあるということです。

注意していただきたいこと

保険が見つかったとしても、それを誰が受け取るかは別の話です。受取人が指定されていれば、その方の固有の権利として支払われるのが原則で、相続人全員で分けるものとは限りません。逆に、受取人がすでに亡くなっている場合には、また別の扱いになります。「保険が存在するか」と「自分が受け取れるか」は、分けて考える必要があります。

不動産を持っていたかどうか分からない

不動産は、預貯金以上に見つけにくい財産です。

田舎に土地があると聞いたことはあるが、場所を知らない。

祖父から相続した土地があるらしい。名義がどうなっているかも分からない。

自宅以外にも何か持っていた気がする。

固定資産税の通知が届いていたはずだが、手元にない。

これまでは、心当たりのある市区町村ごとに一つずつ確認していく必要がありました。県をまたいで所有していると、調査の手間はそれだけ増えます。

この点については、令和8年2月2日から所有不動産記録証明制度が始まっています。亡くなった方が登記名義人となっている不動産を、全国分まとめて確認できる制度です。ただし、登記されていない建物や、登記上の住所氏名が現在の情報と一致しない場合など、これだけでは拾いきれないものもあります。

実際の調査では、この制度と従来からの方法を組み合わせて進めることになります。どの手を使うかは、手がかりの内容によって変わります。

借金があるかもしれない

プラスの財産だけを調べても、判断はできません。

クレジットカードを何枚持っていたのか分からない。

住宅ローンが残っているかもしれない。

商売をしていたので、事業の借入れが心配。

誰かの保証人になっていた可能性がある。

督促のような郵便物が届いたが、内容がよく分からない。

金融機関からの借入れについては、信用情報を通じて確認できる部分があります。ただし、はっきり申し上げておきたいことがあります。

すべての負債が判明するとは限りません

個人間の貸し借りや、保証人になっていた事実は、記録として残っていないことがあります。調査には限界があり、「借金は一切ありませんでした」と言い切れる調査方法は存在しません。この前提を踏まえたうえで、どこまで調べておくか、その結果をどう判断するかを考えることになります。

相続するか、放棄するか

財産の全体像が分からなければ、この判断はできません。

ところが、相続放棄には期限があります。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。疎遠だった場合、亡くなったことを知った時点から数えるのが通常ですが、この期間はあっという間に過ぎます。

期限が迫っているとき

3か月では調査が終わらないという場合、家庭裁判所に対して熟慮期間の伸長を申し立てるという方法があります。認められれば、判断までの時間を確保できます。ただし、期限が過ぎてからでは使えません。

また、相続財産に手をつけてしまうと、相続することを認めたとみなされ、放棄ができなくなることがあります。「とりあえず預金を解約して葬儀費用に充てた」といった行為が問題になる場合もあるため、判断がつく前に動くのは避けたほうが安全です。

期限が近づいている状態でのご相談は、優先してお受けしています。

兄弟から「財産はこれだけ」と言われた

親と同居していた兄弟だけが状況を把握している。このパターンでのご相談も少なくありません。

「残っていたのはこれだけ」と口頭で言われただけで、資料を見せてもらえない。

残高だけ聞かされたが、いつの時点の残高なのか分からない。

入院していた数年の間に、預金がかなり減っているようだ。

不動産の話が一切出てこないが、本当に持っていなかったのか。

相続人であれば、他の相続人を通さずに自分で財産を確認することができます。誰かの説明を信じるしかない、という立場ではありません。

まず自分で全体像をつかんでから話し合いに臨むのか、それとも先に話し合うのか。どちらを選ぶかで、その後の進み方が変わります。

争いになっている場合

すでに相続人の間で対立が生じており、交渉や請求が必要な段階であれば、弁護士のご相談になります。まだ話し合いの前で、事実を確認したいという段階であれば、行政書士がお手伝いできます。

そもそも相続人が誰なのか分からない

疎遠だった場合、相続人の範囲自体がはっきりしないことがあります。

親が再婚していたらしい。

会ったことのない兄弟姉妹がいるかもしれない。

認知した子がいると聞いたことがある。

他の相続人の連絡先を知らない。

これは戸籍をたどって確定させます。出生から死亡までの戸籍をすべて集めるため、本籍が何度も変わっている方の場合は、複数の市区町村にまたがることになります。古い戸籍は手書きで読みにくく、慣れていないと集め終わったかどうかの判断も難しいものです。

戸籍収集だけをご依頼いただくことも可能です。

事務所で相談者に説明する行政書士 何から手をつけるかを整理するところから、ご相談いただけます

全部を依頼する必要はありません

相続の相談というと、手続き一式をお任せいただくものだと思われがちです。フジ行政書士事務所では、そうした形に限っていません。

ご依頼の例 内容
財産調査だけ 何があるのかを確認し、一覧にまとめます。その後どうするかはご自身で判断できます
戸籍収集だけ 出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を確定します
遺産分割協議書だけ 話し合いがまとまっている場合、書面の作成を承ります
一部だけ ご自身で進められる部分は進めていただき、難しいところだけお任せいただけます

「どこまで自分でできるか分からない」という段階でのご相談でも構いません。何から手をつければよいか整理するところからお話をうかがいます。

他士業の業務になる場合

不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間で争いがある場合の交渉は弁護士の業務です。該当する場合はその旨をお伝えします。

よくあるご質問

通帳もカードも一枚も見つかりません。それでも調べられますか。

手がかりが少ない状態からのご相談は珍しくありません。生前の住所や勤務先などから絞り込んで進めていきます。ただし、一つの照会で全国すべての口座が判明する仕組みはないため、どこまで確認するかを相談しながら決めていくことになります。

借金がないことを完全に確認できますか。

できません。金融機関からの借入れは記録をたどれますが、個人間の貸し借りや保証人になっていた事実までは把握しきれない場合があります。調査には限界があるという前提で判断していただくことになります。

相続放棄の3か月が迫っています。間に合いますか。

期間内に判断できない事情があれば、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。期限が過ぎてからでは使えないため、早めにご相談ください。

兄が「財産はこれだけ」と言っています。自分で確認できますか。

相続人であれば、他の相続人を通さずにご自身で財産を確認できます。誰かの説明を信じるしかない立場ではありません。

財産調査だけをお願いすることはできますか。

できます。調査結果をお渡ししたうえで、その後の手続をご自身で進めていただいて構いません。必要になった時点で改めてご相談いただくこともできます。

遠方に住んでいますが依頼できますか。

ご相談は電話やオンラインでもお受けしています。まずはお問い合わせください。

まとめ

疎遠だった親が亡くなり、何も分からない。その状態から始まる相続は、決して例外ではありません。

預貯金も、生命保険も、不動産も、負債も、手元に資料がないところから確認していく方法はあります。ただし、どれも「一度の手続きですべて判明する」という性質のものではなく、手がかりに応じて進め方が変わります。そして相続放棄には期限があるため、調査を後回しにすると選択肢が狭まります。

何から手をつければよいか分からない段階で構いません。まずはご相談ください。

相続財産調査・戸籍収集のご相談

通帳が見つからない、保険に入っていたか分からない、土地の場所が分からない、借金が心配、相続放棄の期限が近い、兄弟の説明に疑問がある。全部をお任せいただかなくても、必要な部分だけのご依頼を承っています。

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