親が亡くなり、相続の手続きを進めているとき、次のように感じることはないでしょうか。
・兄弟の間で揉めてはいないので、できるところは自分たちで進めたい
・専門家に全部任せるほどではないが、戸籍を集めるのが思ったより大変
・親がどこの銀行に預金を持っていたのか、保険があるのか、全体像が分からない
・話し合いは終わったが、遺産分割協議書をどう書けばいいか不安
・途中まで自分でやってみたが、ここから先が分からなくなった
相続の手続きは、全部自分でするか、全部専門家に任せるかの二択ではありません。戸籍の収集だけ、相続人の確認だけ、財産の調査だけ、遺産分割協議書の作成だけ、というように、難しい部分・面倒な部分だけを行政書士に頼むことができます。
この記事では、相続手続きのどの部分を切り出して依頼できるのか、途中から頼む場合はどうなるのか、そして何を頼めばいいか分からない段階での相談の仕方について整理します。
① 相続手続きは「全部頼む」必要はない
相続の手続きは、大きく分けると次のような流れで進みます。どの段階が大変かは、家庭によってまったく違います。
| 段階 | すること | 大変になりやすい家庭 |
|---|---|---|
| 1 相続人を確定する | 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を確認する | 本籍地が何度も変わっている。離婚・再婚・養子などがある |
| 2 財産を把握する | 預貯金、不動産、保険、有価証券、借金などを調べて一覧にする | 親と離れて暮らしていた。親の財産を聞いていなかった |
| 3 分け方を決める | 相続人全員で誰が何を相続するか話し合い、遺産分割協議書を作る | 話し合いは済んだが、書き方が分からない |
| 4 名義変更などをする | 預金の解約・払戻し、不動産の名義変更、車の名義変更など | 金融機関ごとに求められる書類が違う |
戸籍集めだけが大変な家庭もあれば、戸籍は簡単でも財産が分からない家庭もあります。すべての段階を専門家に頼む必要はなく、自分たちでできる段階は自分たちで進め、引っかかった段階だけを頼むことができます。
② 戸籍の収集だけ頼む
実家の引き出しから出てきた通帳や書類を見ても、それが財産の全部なのかは分からないものです
相続の手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になります。金融機関や法務局で「これで全部です」と認めてもらうためには、途切れなくつながっていなければなりません。
戸籍の収集が大変になりやすいケース
・亡くなった方の本籍地が結婚や転居で何度も変わっている
・古い戸籍が手書きで読みにくく、次にどこへ請求すればよいか分からない
・平日の日中に役所へ行く時間が取れない
・途中まで集めたが、あとどれだけ必要なのか判断できない
戸籍の広域交付制度によって、本人の戸籍については最寄りの役所でまとめて取れるようになりましたが、兄弟姉妹の戸籍など対象外のものもあり、すべての相続で一か所で済むわけではありません。
戸籍の収集だけを行政書士に頼み、そろった戸籍を受け取って、その後の手続きはご自身で進める、という形にすることができます。途中まで集めた戸籍があれば、それを引き継いで足りない分だけを集めることも可能です。
③ 相続人の確認だけ頼む
戸籍は自分で集めたものの、「本当にこれで相続人は全員なのか」と不安になる方は多いです。特に次のような事情がある場合は、戸籍を集めただけでは判断しにくいことがあります。
・亡くなった方に離婚や再婚の経歴がある
・前の結婚での子どもがいる、または認知した子どもがいる可能性がある
・養子縁組をした人がいる
・子どもがおらず、兄弟姉妹やその子ども(甥・姪)が相続人になる
・相続人になるはずの人がすでに亡くなっていて、その子どもに相続権が移っている
相続人を一人でも欠いた状態で遺産分割協議をすると、その協議は有効になりません。あとから相続人が判明すると、手続きをやり直すことになります。
集めた戸籍を持ち込んで、相続人が誰になるかの確認と、相続関係を図にした書面(相続関係説明図)の作成だけを頼むことができます。相続人が確定すれば、その先の話し合いはご家族で進められます。
④ 財産の調査だけ頼む
「どこの銀行に預金があるのか分からない」「生命保険に入っていたと聞いたことがあるが、会社が分からない」「不動産があるらしいが、正確な場所が分からない」という状況は、親と離れて暮らしていた場合や、長く疎遠だった場合によく起こります。
財産が分からないまま話し合いをすると、あとから出てきた財産について再度協議が必要になります。逆に、借金などマイナスの財産に気づかず、相続放棄を検討する期間を過ぎてしまうこともあります。
財産の全体像を把握しないまま「とりあえず預金だけ分ける」と進めてしまうと、あとで不動産や別の口座、負債が見つかったときに、分け方を組み直すことになります。財産調査は、話し合いの前に済ませておく段階です。
財産調査だけを行政書士に頼み、財産の一覧(財産目録)ができた時点で、その後の分け方や手続きはご家族で進める、という形にすることができます。財産調査だけの依頼については、別の記事で詳しく扱っています。
⑤ 遺産分割協議書の作成だけ頼む
相続人も財産も分かっていて、「誰が何を相続するか、家族の話し合いは終わっている」という場合、その内容を書面にする作業だけを頼むことができます。
遺産分割協議書は、預金の解約や不動産の名義変更のときに提出する書類です。金融機関や法務局で通る形になっていなければ、書き直しを求められます。
遺産分割協議書で問題になりやすい点
・不動産の表記が登記の記録と一致していない
・預金の口座が特定できる形で書かれていない
・「その他の財産」の扱いが決まっていない
・相続人全員の署名と実印の押印がそろっていない
・あとから見つかった財産の扱いが書かれていない
すでにご家族で合意した内容を、金融機関や法務局で使える形の書面にするのが、この部分依頼の中身です。
「話し合いは終わったが、書面にする自信がない」という段階であれば、その部分だけをご相談いただけます。
⑥ 途中から頼んでもよい
自分で戸籍を集め始めた。遺品を整理して通帳を探した。銀行に問い合わせをした。そこまで進めて、途中で分からなくなった、という方は少なくありません。
その場合、「最初からやり直して全部専門家に頼む」必要はありません。自分でできたところまでを引き継いで、残った部分だけを頼む形で構いません。
亡くなった方の戸籍を役所で取った自分で
実家を整理して、通帳3冊と保険の書類を見つけた自分で
古い戸籍が読めず、次にどこへ請求すればよいか分からない。ほかにも口座があるか調べたいここだけ依頼
相続人と財産が確定したので、兄弟で分け方を話し合う家族で
合意した内容を遺産分割協議書にするここだけ依頼
協議書を持って銀行で解約手続きをする自分で
「途中まで自分でやってしまったから、今から頼むのは気が引ける」と感じる方もいますが、その必要はありません。むしろ、ご自身で集めた戸籍や見つけた書類があるほうが、残りの作業は早く進みます。
⑦ 全部を頼みたい場合にも対応しています
全部ではなく、手元にある書類とともに「この部分だけ」をお願いする形でも構いません
この記事では部分的な依頼を中心に説明していますが、広い範囲を頼むことが向いている方もいます。
・仕事が忙しく、平日に役所や金融機関へ行く時間が取れない
・何から手をつければよいか分からず、最初の整理から一緒に進めてほしい
・高齢で、役所や銀行を何度も回るのが体力的に難しい
・相続人が遠方に住んでいて、書類のやり取りをまとめてほしい
部分依頼が「正しい形」で、全部頼むのが「頼りすぎ」というわけではありません。ご家庭の事情に合わせて、頼む範囲を決めていただければ十分です。範囲は最初に決めきる必要もなく、進めながら広げることも狭めることもできます。
⑧ 手続きによっては、ほかの専門家と一緒に進めることもあります
相続の手続きのうち、戸籍の収集、相続人の確認、財産調査と財産目録の作成、遺産分割協議書の作成、それに基づく金融機関などの手続きの補助は、行政書士が担当します。
一方、不動産の名義変更(相続登記)や相続税の申告のように、手続きによって担当する専門家が分かれているものもあります。こうした手続きが必要な場合は、司法書士や税理士と連携して進めます。行政書士が集めた戸籍や作成した遺産分割協議書は、そのままそれらの手続きにも使えるため、書類を一から作り直す必要はありません。
また、相続人の間で分け方について意見が分かれている場合は、状況に応じて適した相談先をお伝えします。どの窓口に行けばよいか分からない段階でも、まずお話を伺ったうえで整理します。
⑨ 「何を頼めばいいか分からない」段階でも相談できます
ここまで「戸籍だけ」「財産調査だけ」「協議書だけ」と分けて説明してきましたが、ご相談いただく段階で、ご自身がどの依頼に当たるのかを判断できている必要はありません。
「親が亡くなって、何から手をつければいいか分からない」「兄が途中まで進めているが、自分は何を手伝えばいいのか分からない」という状態で構いません。今の状況を伺って、次の3つに分けるところから一緒に整理します。
| ご自身ですること | ご家族ですること | 行政書士に頼むこと |
|---|---|---|
| 近くの役所で取れる戸籍を取る。実家の書類を整理する。分かっている金融機関に連絡する | 誰が何を相続するかを話し合う。誰が手続きの窓口になるかを決める | 遠方や古い戸籍の収集。相続人の確認。把握できていない財産の調査。遺産分割協議書の作成 |
この振り分けをした結果、「頼むところがほとんどなかった」ということもあります。その場合は、進め方の確認だけで終わっても構いません。
⑩ 相続手続きは二択ではありません
相続の手続きは、全部自分でするか、全部専門家に任せるかの二択ではありません。
戸籍集めが大変 → 戸籍の収集だけ
相続人が全員かどうか不安 → 相続人の確認だけ
財産が分からない → 財産調査だけ
話し合いは終わっている → 遺産分割協議書の作成だけ
途中で分からなくなった → そこから先だけ
フジ行政書士事務所では、相続手続きについて必要な部分だけのご依頼にも対応しています。「全部お願いするほどではないのですが」という方こそ、一度ご相談ください。
フジ行政書士事務所へのご相談について
次のようなご相談を受け付けています。
・戸籍の収集だけ、相続人の確認だけを頼みたい
・亡くなった親の財産がどこにあるか調べてほしい
・家族で決めた分け方を遺産分割協議書にしてほしい
・途中まで自分で進めたが、残りをどうすればいいか分からない
・何を頼めばいいか分からないので、状況の整理から相談したい
ご自身で集めた戸籍や見つけた書類があれば、それを引き継いで残りだけを進めます。大阪府箕面市の事務所を拠点に、郵送・オンラインで全国からのご相談に対応しています。
とりあえずLINEで相談する フジ行政書士事務所ホームページよくあるご質問
Q1 戸籍の収集だけを行政書士に頼むことは本当にできますか?
できます。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人の現在の戸籍を集めてお渡しし、その後の手続きはご自身で進めていただく形です。途中まで集めた戸籍があれば、足りない分だけを集めることもできます。
Q2 自分で集めた戸籍を持ち込んで、相続人の確認だけしてもらえますか?
できます。集めた戸籍を確認し、不足があればお伝えし、相続人が確定したら相続関係説明図を作成します。離婚・再婚・養子縁組などがある場合や、兄弟姉妹が相続人になる場合は、この確認だけでも依頼される方が多いです。
Q3 遺産分割協議書だけ作ってもらう場合、分け方は決まっていないといけませんか?
決まっている必要があります。行政書士は、相続人全員が合意した内容を手続きで使える書面にする立場です。まだ話し合いの途中であれば、相続人と財産の整理までを先に進めておくと、その後の話し合いがしやすくなります。
Q4 途中まで自分で進めたのですが、今から頼めますか?
頼めます。ご自身で進めたところまでを引き継ぎ、残った部分だけを進めます。最初からやり直す必要はなく、集めた戸籍や見つけた書類はそのまま活かせます。
Q5 不動産の名義変更や相続税の申告も一緒に頼めますか?
不動産の名義変更(相続登記)や相続税の申告は、司法書士・税理士と連携して進めます。行政書士が集めた戸籍や作成した遺産分割協議書はそのまま使えるため、書類を作り直す必要はありません。
Q6 何を頼めばいいのか自分では分かりません。それでも相談できますか?
できます。今の状況を伺って、ご自身でできること、ご家族で決めること、行政書士に頼むことを分けるところから一緒に整理します。整理した結果、頼む部分がほとんどないということもあり、その場合は進め方の確認だけで終わっても構いません。
