「自国を最優先にする」は世界の流れか

「ビザの審査が、以前より明らかに厳しくなった」――近年、外国人の在留資格・ビザ申請の現場でそう実感する場面が増えています。これは日本に限った話ではなく、世界各国が「自国の利益を守る」方向へ舵を切っているという大きな潮流の一部です。この記事では、不動産の透明化とビザ制度の厳格化という世界的な動きを整理したうえで、日本の在留制度で実際に何が変わりつつあるのか、そして申請者がどう備えるべきかを、行政書士の視点で解説します。

自国優先の世界的潮流とビザ制度の厳格化

「自国優先」は、いま世界が共有する潮流

安全保障、経済、食料、水資源、人口動態、住宅価格――どの分野を見ても、いま各国は「国内を守ること」を最優先に政策を組み立てています。その中で、不動産分野と並んで国際的な潮流となっているのが、ビザ・在留制度の厳格化です。

一見すると別分野ですが、両者は「国家として守るべき領域をどう管理するか」という共通テーマでつながっています。外国人の受け入れは、単純労働から高度人材へと重点を移し、法令遵守を徹底させる方向へシフト。「労働力不足だから誰でも」という発想は薄れ、「受け入れる人材を選ぶ」ことが当然視されるようになりました。

不動産の透明化とビザ厳格化――各国の動き

欧米ではすでに、自国の土地・不動産を守る制度強化が当たり前になっています。ビザ制度も同様に、世界的に厳格化が進んでいます。

国・地域不動産ビザ・在留
英国海外法人の取得時に実質所有者の開示を義務化。匿名所有はほぼ不可能に就労・留学ビザの要件厳格化
EU加盟国間で所有者・実質所有者情報を共有する体制を構築中域内で在留審査の透明化が進む
米国一部の州で外国人の土地購入を制限。軍事施設周辺は厳格審査就労ビザのハードル上昇、延長審査も厳格化
カナダ・豪州外国人の住宅取得規制を導入・強化留学・労働ビザの審査基準を相次いで強化

カナダやオーストラリアでは、「学ぶ意思がない」「労働目的が強い」と見られる申請は容赦なく拒否されるようになりました。これは単に労働者数を制御するためではなく、社会秩序・税制度・安全保障・経済構造を守るための対応として行われています。「誰でも受け入れる時代」から「受け入れる外国人を選ぶ時代」へ――いま世界が共有している価値観です。

国際機関も「透明性と適正な選別」を求めている

OECD、FATF(金融活動作業部会)、トランスペアレンシー・インターナショナルといった国際機関も、各国が自国の安全と利益を守るための制度強化を進めるべきだとしています。これは閉鎖的な政策の推奨ではなく、透明性の欠如が国際犯罪・脱税・マネーロンダリングの温床になるのを防ぐためです。

OECDは不動産の匿名所有を重大なリスクと位置づけ、「最終的な所有者」の把握が不可欠だとしています。ビザ・在留制度についても、「法令遵守」「自立性」「社会への適合度」を重視した選別を求めており、特に“労働目的の留学”が世界的に問題化していることから、留学審査の強化は国際的な共通課題になっています。

日本の在留制度の厳格化

日本でも、在留管理の透明化と審査の厳格化が同時に進んでいます。

日本でも始まっている、ビザ審査の厳格化

日本にとって、外国人の受け入れと自国の保護は両立すべき課題です。すでにビザ審査の実務レベルで厳格化が始まっています。代表的な在留資格ごとに、近年チェックが厳しくなっているポイントを整理します。

技術・人文知識・国際業務(技人国)

「実際の業務内容が、学歴・専攻に基づく専門性と合致しているか」がより細かく審査されます。形式的な職務内容では不許可になりやすくなっています。

留学

「学習の実態」と「生活の安定性(経費支弁能力)」が厳しく求められます。出席状況や資金の出所もチェックされます。

経営・管理

2025年10月以降の制度改正で要件が大幅に強化。事業の実態、資金の出所、常勤職員の雇用状況などが細かく審査され、形式的な会社設立では許可が出にくくなっています。

さらに今後は、外国人雇用の監視、旅券の適正管理、入管への届出義務の徹底などが一層強化されると予測されます。これは外国人を排除するためではなく、健全な受け入れと社会の安定を両立させるための方向性です。透明な制度と公正な審査が整うことは、本当に日本で活躍したい人にとって、むしろ安心できる環境につながります。

厳格化の時代に、申請者はどう備えるべきか

審査が厳しくなるということは、裏を返せば「書類の精度」と「実態の説明力」がこれまで以上に問われるということです。同じ事業・同じ経歴でも、申請書類の組み立て方一つで結果が分かれるケースは少なくありません。

こんな方は専門家への相談をおすすめします

  • 経営・管理ビザで会社設立・事業計画の実態をどう示せばよいか不安
  • 技人国で、職務内容と専門性の整合をうまく説明できるか心配
  • 過去に不許可・不交付になった経験がある
  • 更新・変更のタイミングで要件が変わっていないか確認したい

制度が複雑化・厳格化する時代こそ、最新の審査傾向を踏まえた書類作成が結果を大きく左右します。行政書士は、在留資格に関する申請書類の作成・点検や、入管手続き全体を見通したサポートを行います。

この記事のまとめ

  • 世界は「自国優先」へ。不動産の透明化とビザ厳格化が同時に進行
  • 「誰でも受け入れる」から「受け入れる人を選ぶ」時代へ
  • 日本でも技人国・留学・経営管理を中心に審査が厳格化
  • 厳格化の時代は「書類の精度」と「実態の説明力」が結果を分ける

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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