特定技能1号の外国人を受け入れる会社は、登録支援機関に支援を全部委託しなければならないわけではありません。要件を満たせば、会社自身が支援を行う「自社支援」も認められています。
ただし実務上の選択肢は「全部委託か、完全自社支援か」の二択ではありません。自社支援を基本にしながら一部の支援業務だけを外部に出す形もあり、さらに2027年4月1日からは支援体制の要件そのものが変わります。この記事では、3つの形の違いと、自社ならどれを選ぶべきかの判断材料を整理します。
特定技能1号は自社支援できる
結論から書きます。特定技能1号外国人の支援について、登録支援機関への委託は必須ではありません。受入れ企業(特定技能所属機関)が支援体制に関する基準を満たしていれば、1号特定技能外国人支援計画を自ら実施できます。
登録支援機関は、支援計画の実施を企業から受託できる機関として制度化されたものです。企業が自ら支援できるだけの体制を持っているなら、外部に出さずに実施して構いません。逆にいえば、登録支援機関に支援計画の全部を委託した場合は、企業が支援体制の基準を満たしているものとして扱われます。ここが、委託が事実上の標準になっている理由です。
押さえるべき前提
支援計画を作成する義務は、委託していても受入れ企業にあります。委託は「支援の実施」を外に出す仕組みであって、責任ごと外に出す仕組みではありません。
支援の形は3つある
実務で選択肢になるのは次の3つです。まず全体像を比較します。
| 形 | 支援の実施主体 | 企業側の体制要件 | 主な負担 |
|---|---|---|---|
| A 全部委託 |
登録支援機関 | 全部委託により基準を満たすものとみなされる | 委託料(月額) |
| B 完全自社支援 |
受入れ企業 | 企業自身が支援体制の基準を満たす必要がある | 人件費・工数・通訳・記録管理 |
| C 自社支援+一部外注 |
受入れ企業 (一部の業務を外部に委託) |
企業自身が支援体制の基準を満たす必要がある | 社内負担+外注費(実施した分のみ) |
注意していただきたいのは、BとCで企業側に求められる体制要件は同じだという点です。Cは「要件を満たせない部分を外部で埋める仕組み」ではありません。ここを取り違えたまま自社支援に切り替えると、届出や更新の段階で問題になります。
自社支援は「担当者を1人決める」だけでは足りない
自社支援を選ぶ場合、社員を1人「支援担当者」に指名すれば済むわけではありません。制度上は、おおむね次のような点が確認されます。
自社支援で確認される主な事項
1 過去2年間に中長期在留者の受入れ実績があること、または生活相談等に従事した経験のある役職員がいること
2 支援責任者・支援担当者を選任していること
3 外国人が十分に理解できる言語で支援・相談対応ができる体制があること
4 支援の実施状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上保存すること
5 支援責任者・支援担当者が中立に支援を実施できる立場であること
5点目は見落とされやすい要件です。入管庁のQ&Aでは、支援責任者・支援担当者は当該外国人に対する指揮命令権を持たない者であることが求められ、代表取締役や、その外国人が所属する部署を監督する立場の者は適格性がないとされています。役員の配偶者や2親等内の親族も同様です。
つまり「現場の班長さんが面倒を見ています」という形は、そのままでは自社支援の体制として成り立ちません。小規模な会社ほど、この中立性の要件が最初の壁になります。
2027年4月1日から支援体制の要件が変わる
ここが、いま自社支援を検討する会社にとって最も重要な論点です。入管法施行規則と特定技能基準省令が改正され、令和9年(2027年)4月1日から支援体制の要件が変わります。入管庁が示した主な改正点は5つです。
支援責任者・支援担当者を事業所ごとに常勤から選任する
改正後は、支援を行う事業所ごとに、常勤の役員または職員の中から支援責任者と支援担当者をそれぞれ1人以上選任することとされます。支援責任者が支援担当者を兼務することは可能です。
会社全体で1人置けばよいという形ではなくなるため、複数の事業所で特定技能外国人を受け入れている会社は、事業所の数だけ常勤の担当者が必要になります。
支援業務に従事できる者が支援責任者等に限定される
改正点の2つ目は、支援業務に従事することができる者を支援責任者・支援担当者に限定する、というものです。
現行制度で自社支援している会社が最も影響を受ける点
パート社員や非常勤の通訳スタッフが日常的な相談対応や同行支援を担当している運用は、2027年4月以降そのままでは続けられません。支援に当たる人が、常勤の役員または職員から選任された支援責任者・支援担当者であることが求められます。
この改正は、支援を「誰がやっているか」を体制図として説明できるかどうかを問うものです。実質的に外部の人材や非常勤スタッフに依存していた会社ほど、影響が大きくなります。
支援担当者1人につき1号特定技能外国人50人未満
3つ目は人数基準です。支援担当者1人が支援できる1号特定技能外国人の数は、支援担当者1人当たり50人未満とされます。入管庁の資料では自社支援の場合の図も示されており、支援担当者が1人であれば50人未満、3人であれば150人未満という形で説明されています。
受入れ人数が多い会社は、人数が増えるほど自社支援の体制も比例して重くなります。「人数が増えたから委託料がもったいない」という発想だけで自社支援に動くと、この基準に突き当たります。
支援責任者に養成講習の受講が義務付けられる
支援責任者には、入管法や労働関係法令等に関する養成講習の受講が義務付けられます。ただし令和9年4月1日以降であっても、当分の間は講習を修了していなくても差し支えないとされています。
登録支援機関側にも受託数の上限ができる
5つ目は登録支援機関側の基準です。登録支援機関が支援業務の委託を受けることができる特定技能所属機関の数は、支援担当者1人当たり10機関未満とされます。
これは委託している企業にとっても他人事ではありません。委託先が要件を満たせなくなれば、支援体制を組み直す必要が出てきます。全部委託を続ける会社も、委託先が2027年4月以降の体制を確保できるのかは確認しておくべき事項です。
支援を誰が担当するかは、2027年4月以降の要件を前提に決める必要があります
いま確認しておきたいこと
現在すでに自社支援をしている会社は、いまの担当者が常勤か、事業所ごとに配置できるか、受入れ人数に対して担当者数が足りるか、この3点を先に確認すると判断が早くなります。フジ行政書士事務所では、この確認だけのご相談もお受けしています。
「全部自社でやる」以外の方法がある
自社支援を選んだ会社が、支援業務のすべてを自社の人手だけで回さなければならないわけではありません。受入れ企業は、支援計画の全部または一部の実施を他の者に委託することができます。
義務的支援は次の10項目です。このうち、外部に委託して実施することが実務上考えられるものと、そうでないものがあります。
義務的支援10項目
1 事前ガイダンス
2 出入国する空港等への送迎
3 住居確保・生活に必要な契約の支援
4 生活オリエンテーション
5 公的手続等への同行
6 日本語学習の機会の提供
7 相談・苦情への対応
8 日本人との交流促進
9 非自発的離職時の転職支援
10 定期的な面談と関係行政機関への通報
実務でよく外に出されるのは、送迎、住居確保に関する補助、公的手続への同行、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供といった、発生の頻度が読みにくく、その都度の手間が大きい項目です。逆に、日常の相談対応のように継続的な関係が前提になる項目は、社内で持つほうが機能します。
一部を外注しても、支援の主体は企業のまま
ここが制度上いちばん誤解されやすい部分です。支援業務の一部を外部に委託しても、支援の実施主体は受入れ企業のままです。
よくある誤解
「自社支援の要件を満たしていない部分だけ外部にお願いすれば、自社支援ができる」という制度ではありません。一部外注はあくまで、自社支援の要件を満たしている企業が、実施方法として一部を外に出す形です。
もう1点、表現上の注意があります。登録支援機関は、支援計画の全部を実施できる者として登録を受ける制度であり、「一部だけを行う登録支援機関」という登録区分はありません。したがって「登録支援機関に一部委託する」という言い方は正確ではなく、「自社支援を行う企業が、支援業務の一部を外部に委託する」と捉えるのが制度に沿った理解です。
定期面談は外部に切り出せない
一部外注を検討するときに必ず確認が必要なのが定期面談です。
特定技能基準省令では、支援計画に記載すべき事項として「支援責任者又は支援担当者が当該外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施し」と定められています。面談を行う主体が支援責任者・支援担当者と条文上特定されているため、支援計画の全部を登録支援機関に委託している場合を除き、定期面談だけを切り出して外部に任せることはできません。
「基本は自社支援にして、面倒な定期面談だけ外部にお願いする」という組み立ては成立しない、ということです。自社支援を選ぶ会社は、3か月に1回以上の面談を、外国人が十分に理解できる言語で自社の担当者が実施できる体制を確保する必要があります。
2027年4月以降は、この面談を行う支援責任者・支援担当者が常勤の役員または職員であることも求められます。定期面談は、自社支援を選べるかどうかの実質的な分かれ目になります。
全部委託・自社支援・一部外注の選び方
ここまでを踏まえて、どの形が向いているかを整理します。人数だけでは決まりません。
全部委託が向いている会社
特定技能外国人の受入れが初めて、または受入れ人数が少なく、社内に外国人対応の経験者がいない会社です。中立性の要件を満たす担当者を確保できない、外国人が理解できる言語での相談対応を社内で用意できない、といった場合も全部委託が現実的です。事業所が複数あり、2027年4月以降に事業所ごとの常勤担当者を置くのが難しい会社も含まれます。
完全自社支援が向いている会社
すでに外国人の雇用実績があり、生活相談の経験を持つ常勤の役職員がいて、その人が現場の指揮命令ラインから外れている会社です。受入れ人数がまとまっていて社内にノウハウを蓄積する意味がある、通訳や多言語対応を社内で確保できる、記録の作成・保存を継続できる総務体制がある、という条件がそろうと機能します。
自社支援+一部外注が向いている会社
体制要件は満たせるものの、特定の支援項目に負担が集中している会社です。たとえば空港が遠く送迎の負担が大きい、入国のタイミングが重なって住居確保や生活オリエンテーションが集中する、公的手続への同行のたびに現場の人手が抜ける、といったケースです。
日常の相談対応と定期面談は社内で持ち、単発で発生する業務を外に出す。この形が、自社支援を続けながら現場の負担を抑える現実的な組み立てになります。
公的手続等への同行は、外部に委託して実施することが考えられる支援の一つです
費用は「委託料 対 ゼロ円」ではない
仮に登録支援機関の委託料を1人あたり月額2万円とすると、5人で年間120万円、10人で年間240万円、20人で年間480万円になります。この数字だけを見ると、人数が増えるほど自社支援が有利に見えます。
ただし比較すべきは、外部委託コストと社内支援コストです。自社支援には支援責任者・支援担当者の人件費、支援に費やす勤務時間、通訳・翻訳、移動費、面談、記録の作成と保存、制度改正への対応といったコストが発生します。2027年4月以降は、常勤の役職員を事業所ごとに確保することそのものがコストになります。
「何人以上なら自社支援が得」という公的な基準はありません。事業所の数、受入れ人数、既存社員の外国人対応経験、言語対応の有無によって結論は変わります。
登録支援機関から自社支援へ切り替えるとき
現在全部委託をしている会社でも、要件を満たせば自社支援や自社支援+一部外注への切替えは可能です。ただし、委託契約を解除すれば済む話ではありません。
切替えで整理が必要な事項
・自社支援の体制要件を満たしているかの確認
・支援責任者・支援担当者の選任
・支援計画の変更
・支援計画の変更等に伴う入管への届出
・登録支援機関との委託契約終了に関する手続
・一部外注に切り替える場合の、支援業務ごとの実施者の整理
切替えのタイミングも実務上の論点です。2027年4月の施行を挟んで切り替える場合、切替え直後に体制要件が変わることになるため、新しい要件を前提に体制を組んでおくほうが手戻りがありません。
フジ行政書士事務所に相談できること
フジ行政書士事務所は、行政書士事務所であると同時に登録支援機関です。そのため、支援を全部お引き受けすることも、自社支援を続ける会社からの個別のご相談をお受けすることもできます。
| ご相談の内容 | 対応 |
|---|---|
| 自社支援が できるか知りたい |
体制要件・中立性の要件・2027年4月以降の要件に照らして確認します |
| 全部委託を 検討している |
登録支援機関として支援計画の全部をお引き受けします |
| 自社支援を 続けたい |
個別に外部委託できる支援業務についてご相談をお受けします |
| 自社支援へ 切り替えたい |
体制整理、支援計画の変更、必要な届出書類の作成・申請を代行します |
| 在留資格の 手続もまとめたい |
行政書士として在留諸申請・各種届出に対応します |
どの形が適切かは、事業所の数、受入れ人数、既存社員の経験、対応できる言語によって変わります。まず現状の体制を確認するところからで構いません。
よくあるご質問
特定技能1号は登録支援機関に委託しなければなりませんか。
必須ではありません。受入れ企業が支援体制に関する基準を満たしていれば、自社で1号特定技能外国人支援計画を実施できます。支援計画の全部を登録支援機関に委託した場合は、支援体制の基準を満たしているものとみなされます。
定期面談だけを登録支援機関に委託できますか。
できません。特定技能基準省令では、支援責任者または支援担当者が定期的な面談を実施することと定められているため、支援計画の全部を登録支援機関に委託している場合を除き、定期面談だけを外部に委託することはできません。
支援業務の一部を外部に委託すれば、自社支援の要件を満たさなくても自社支援できますか。
できません。一部を外部に委託しても支援の実施主体は受入れ企業のままであり、企業自身が支援体制の基準を満たしていることが前提です。
2027年4月1日から何が変わりますか。
支援責任者・支援担当者を支援を行う事業所ごとに常勤の役員または職員から1人以上選任すること、支援業務に従事できる者を支援責任者・支援担当者に限定すること、支援責任者に養成講習の受講を義務付けること、登録支援機関の受託機関数を支援担当者1人当たり10機関未満とすること、支援担当者1人が支援できる1号特定技能外国人を50人未満とすることが主な改正点です。
いまパート社員が支援を担当していますが、2027年4月以降も続けられますか。
そのままでは続けられません。改正後は支援業務に従事できる者が支援責任者・支援担当者に限定され、これらは常勤の役員または職員から選任することとされます。施行前に体制を組み直す必要があります。
受入れ人数が何人以上なら自社支援のほうが安くなりますか。
人数だけで決まる基準はありません。外部委託コストと社内支援コストの比較になり、事業所の数、担当者の人件費と工数、言語対応の有無によって結論が変わります。
登録支援機関から自社支援に切り替えるには何が必要ですか。
自社支援の体制要件の確認、支援責任者・支援担当者の選任、支援計画の変更、入管への必要な届出、委託契約終了に関する手続が必要です。契約を解除するだけでは切替えになりません。
まとめ
特定技能1号の支援は、登録支援機関への全部委託だけが選択肢ではありません。要件を満たせば自社支援ができ、自社支援を基本にしながら一部の業務を外部に委託することもできます。
ただし、一部を外に出しても支援の主体は企業のままであり、定期面談は切り出せません。そして2027年4月1日からは、支援に当たれる人が常勤の支援責任者・支援担当者に限定され、事業所ごとの配置と1人50人未満という人数基準が加わります。現行制度のまま自社支援を続けられるかどうかは、いまの体制を要件に照らして確認するしかありません。
自社の場合どの形が適切か、いまの体制で2027年4月以降も対応できるか。フジ行政書士事務所にご相談ください。
特定技能の支援体制についてのご相談
全部委託・自社支援・一部外注のどれが適切か、現在の体制で2027年4月以降も対応できるか、登録支援機関から自社支援へ切り替えられるか。フジ行政書士事務所は行政書士事務所であり登録支援機関です。体制の確認だけのご相談も承ります。
とりあえずLINEで相談する フジ行政書士事務所ホームページ・1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について(令和9年4月1日施行)
・1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の主な改正点(PDF)
・特定技能制度に関するQ&A
・特定技能運用要領・1号特定技能外国人支援に関する運用要領
本記事は2026年8月31日時点の情報に基づいています。2027年4月1日施行の改正に関する運用要領等が今後公表された場合は、最新の内容をご確認ください。
